4スタンス理論の学び方②（やってる感について)

私は骨理学（4スタンス理論）についてバイオメカニクス研究をしながら指導もしている立場です。

その中で「学ぶ」と「活用する」の間にギャップがある方も多いと感じています。この連載では、4スタンス理論を学ぶ人がハマりやすいパターンを解説します。

第2回は「やってる感」というテーマについて解説します。
（前回の記事はこちら🔗）

パターン2：「やってる感」を求めてしまう

「違和感」の反対は「何もない」

やってる感の前に、身体感覚について軽く触れておきます。楽器演奏やスポーツをする人ならだれでも、うまくいかないときに「違和感」を覚えたことがあると思います。

そこでたくさん練習したり指導を受けたりして解決すると「しっくり」来る感覚はありませんか。または、身体の不調や痛みがあるときになんらかの施術を受けて「気持ちよさ」を感じたことはないですか。

「違和感」の反対は「しっくり感」なのでしょうか。
「痛い」の反対は「気持ちいい」なのでしょうか。

骨理学（4スタンス理論）ではどちらも不正確と考えます。

ふだん道を歩いて「この一歩はしっくりくるなあ」とイチイチ考える人はいません。不調がない人は日常生活で「気持ちよさ」を感じません。

毎日が健康なら「何もない」「ふつう」の感覚です。とすると「しっくり」や「気持ちいい」は相対的な感覚と捉えるほうが正確です。

不適切なうごきから理想的なうごきに変わると短時間だけ「しっくり」を感じ、身体の軸や骨座標がおかしい状態から整ったときに短時間「気持ちよさ」を感じます。

「しっくり」は求めるものではない

もうすこし具体的な例で考えます。
たとえば重心が本来よりうしろすぎて違和感があるとき。重心が相対的に前方に推移して、本来の重心軸が形成されると「しっくり」来ます。

そのまま正しい重心軸でプレイングしていると、そのうちしっくり感は薄れます。正しい重心軸でうごくのは身体にとって「当たり前」や「本来の姿」なので、しっくりくるのは最初だけです。しかし、薄れた「しっくり」をさらに求めてしまう人がけっこう多いのです。

すでに整っているのに「しっくり」を求めて何かを変えると崩れます。崩れてからもういちど整えるとまた「しっくり」きます。感覚的には「カイゼン活動」をしているような気分になりますが、実際は自分で崩して整えてを繰り返しているだけです。

バッティング練習で調子がいい日、最初は爽快感を感じますが、長く続けると感覚が狂って最終的に調子を落として帰るなんてことも。皆さんの普段の種目に当てはめて思い出してみると結構ありがちだと思いませんか。

これは最初の「しっくり」「爽快感」「吹奏感」などの一時的な感覚にすがってしまうと起こります。

タイプ別を意識しすぎてしまう

タイプ別を知った人が必ずと言っていいほどハマる問題があります。それは、タイプ別をいつまでも「意識」してしまうことです。

もともと軸が崩れている人がタイプ別メソッドを試すと急激によくなります。楽器の音量や音色が改善し、指もよく回るので驚かれます。バッティングの飛距離や投球のコントロールや球速も一瞬で変わります。

タイプ別でありえないほど大きな効果が出るので、「意識」が強烈に記憶にのこります。

「こんなに前で立っていいの！？」
「ヒジがこんなところにあっていいの！？」

などはよく受講者から言われます。

この強烈な成功体験によって「タイプ別さえやっとけばいいんだ」とカン違いが生まれます。

例えばBタイプが「いつもより後ろで軸を作るとこんなにうまくいくんだ！」と感じて「うしろうしろ…」と意識していたら、いつの間にかふんぞり返って打っていたなんてこともあります。書籍だけで4スタンス理論を勉強した人にかなり多くみられる現象です。

前回の記事で説明したように、タイプとは軸が整った時に自然に表れるものなので、意識から無意識にステップアップしなければいけません。

「やってる感」を求めすぎてない？

「やってる感」は違和感やしっくりと同様にふだんは感じないほうがいいです。筋トレで「効かせて」いる人にケガが多いのと同じです。

軸が崩れてタイプ違いになると抵抗が大きくなり、余計な力が必要です。この変な方法で無理やりうごき続けると「やってる感」や「効いてる感」を感じ、それが「努力」だとカン違いします。

効率のわるいうごき方なので再現性は低く上達はおそくなり、関節に不適切な力がかかってケガも多くなります。

指導者から「あれはダメ」「これはダメ」と言われている人に多いです。「じゃあどうしたらいいの」は教えてもらえず消去法でフォームづくりをしていることも。

そういう指導を長年受けた方が4スタンス理論で本来の自由でラクなうごき方を知っても「うごいているときにやってる感がない！」と不自由な「やってる感」を求めることがあるのです。

本来は意識しなくても自然に自分のタイプのうごきが出るようにするべきです。崩れたときだけタイプ別を意識すれば十分です。

「やってる感」を演出させてない？

「あれはダメ」型の指導者が4スタンス理論を知ると「君はAタイプだから前にいきなさい」などと間違った指導をしがちです。すでに前につんのめっている人に「前に行け」と言うような例もよく見かけます。

いろいろ分かっていてこの表現を使うなら問題ありませんが、生徒の状態を見ずにタイプに当てはめるのは4スタンス理論ではありえません。

こういう指導者から4スタンス理論を習った生徒には共通点があります。