新潮文庫くるんとーと
ネットで買ってしまった。全部で4000円もした。「新潮文庫くるんとーと」。ガチャポンである。あのお金を入れて、ダイヤルを回して、商品の入ったカプセルを出す、あれである。
やったことは、ある。
「できるかな」のゴン太くんのカプセルがあって、やってみるとハニ丸がでた。次もハニ丸。ハニ丸を3回出して、ようやくゴン太を手に入れた。確か一回200円。とんだ散財である。ハニ丸は近くにいた子供に押し付けて、ゴン太をまだ小さかった娘にやった。
「お父ちゃん、これ何」
「可愛いやろ。ゴン太いうてな、いま貰われて女子大におるらしい」
「これどうするん?」
「ランドセルにつけときなさい。それを見れば、お父ちゃんくらいの年齢の人は、みんな優しくしてくれるで」
娘はいそいそとゴン太をランドセルをつけ、翌日、欲しいと言った子に、すぐにあげてしまった。
苦い思い出である。
ああ、「新潮文庫くるんとーと」の話だった。種類が四種類あって、「文鳥・夢十夜」「怪人二十面相」「斜陽」「それから」。
さて、問題です。とーとバックに印刷されている文章から、その種類を当てなさい。
A、僕は自分がなぜ生きていなければならないのか、それが全然わからないのです。
B、小林君によろしく伝えてくれ給え。あれは実に偉い子だ。僕は可愛くて仕方がないほどに思っている。
C、僕の存在には貴方が必要だ。どうしても必要だ。僕はそれだけのことを貴方に話したい為に、わざわざ貴方を呼んだのです。
D、百年待っていて下さい。百年、私のお墓の傍に坐って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから。
欲しい。これを知ったのが8月で、それから新宿とか池袋とかガチャポンがいっぱい置いてあるところを、気がつくと回ってみたのだが、ガチャポンの機械じたいが、ない。そうこうしてるうちに、一月たって、あれどこで売ってるのか調べてみた。川越とか神奈川とか、東京が一つもない。しまった、売り切れたか。
仕方ない。ネットで買うか。別に買わなくてもいいちゃいいのだが、私は根がミーハーなのである。家には、中原中也のあの帽子とか、正岡子規カルタとかがある。いずれも記念館で買った。買ってからわかったが、帽子は小さすぎて入らない。だいたいあんな帽子、被っていく場所がない。服装とのコーディネートも難しい。正岡子規カルタに至っては、ビニールの包装さえはがしてない。記念館に行くと、なんか高揚して買っちゃうのである。
でも、いいじゃないか。私はギャンブルもしないし、酒を飲むのに店にも行かない。車はないし、ゴルフもやらない。服も滅多に買わないし、時計は1000円のオモチャみたいなやつである。外食だって滅多にしない。欲しいものは本だけだったが、それも今では図書館ですます。このくらいの散財はいいではないか。
しかし、BANDAI and新潮社。エコトートバッグをガチャポンで売り出すとは卑怯な! しかも一回500円。
これ、実際、機械を前にして、一度でやめられる自信がない。できれば全部揃えたい。だが、必ずダブルだろう。四種類揃えるのに、一体どれほど散財しなければならないか。
それを考えれば、2倍でもネットて買う方がお得かもしれない。エコバッグが4つもいらないって? いや、私は、いる! 欲しい。
だから、ネットで注文した。メルカリで見たら、ひと種類700円くらいで出ている。が、一番欲しい「怪人二十面相」のやつがない。バラバラだとそれぞれに送料もかかる。ここはひとつ、4種類、送料込みで4000円で手を打とう。
そして、買った。買ってしまった。来るのが楽しみである。きたら、毎日とりかえてコンビニに行くとしよう。
「お客様、レジ袋は」
「いや、いらない。持ってきた」
そう言って、それとなく「怪人二十面相」の挑戦状を店員に見せるのだ。
ああ、今から楽しみである。
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