萬御悩解決致〼 第一話⑧
四時になって校庭に出ると、恐るべきことが起こっていた。
うちのクラスの女子が5、6人練習を見ている。
女子の横を通る時、
「悠くん。頑張ってね」
とか、声までかけられた。
内野まで走って、先に来て柔軟をしている輪に入ろうとすると、主将の大熊先輩に呼ばれた。
「花田。あれはなんだ?」
ライトの奥に目を向けると、そこに固まる女子達が小さく手を振る。
「いや、その、なんでしょうね」
「あ、いなくなってる」
キャッチボールの列で隣になった柴田先輩が言う。残念そうである。
「そんな、練習全部見るわきゃないしょ」とボールを受けて、俺。
「まぁ、そうだけどよぉ」と、ボールを投げて柴田先輩。
「下校途中で、ちょっと立ち止まって見てただけっしょ」
「まぁ、そうなんだけどよぉ。それでもなんか嬉しかねぇか。ちょっとでも関心持ってもらえて」とグラブを上げて、ボールを呼ぶ。
「なんすか。柴田先輩、女子と話したことないんですか」
「花田。まじ、殺すよ」
「試合、見に来てって誘えばいいんですよ」
大熊先輩の、「えんとぉーう っ!」の声がかかる。
「うぉーいっ!」
と全員で返事して広がる。あれれ、なんか皆さん、足取り軽くないっすか。男って単純すね。