萬御悩解決致〼 第一話⑤
「で、なんで俺?」言ってすぐに気がついた。「わかった。相良の野郎をシメりゃいいのか」
こう見えても、2年にして野球部の代打の切り札だ。まあ、予選一回戦負け常連のチームではあるが、一応野球部は俺でもっている。そして、野球部と言えば、運動部の花形だ。言いかえるならば、運動部の頂点に俺はいる。それだけの運動能力と体力を秘めてるのがーー。
「ばーか。あんたが暴力沙汰起こしたら、野球部、春の大会に出られなくなるのよ」
ああ、そうだった。俺の体は俺だけのものではなかった。今、何かしでかすと、先輩方にご迷惑がかかる。
「じゃ、俺に何をしろと」
「それはね」と圭介が顔を寄せる。
「なんだ、お前が考えたのか。なら、やらない」
「いやいや、奈央ちゃんと二人で考えたんだ。ね」
奈央がにっこり笑う。か、かわいいなあ。
「な、奈央もか。そうか。じゃ、聞くだけ聞くか。言っとくが、俺は春の大会を控えた野球部の代打の切り札なんだからな。暴力沙汰だけはダメだ」
「だから、しないつってるだろ」
驚愕の作戦だった。確かに暴力沙汰ではないが、この作戦を行えば、俺の評判は地に落ちることになるかもしれない。
「これは……、ちょっと……」
「代われるなら僕がやりたい。だけど、僕でダメなのはわかるよな」と圭介。
「まあ」
「そう。この秘密作戦は花田悠抜きには考えられないんだ。やってくれるな」
「腹立つなあ。なんでお前が、そんな上から目線なんだよ」
「やってくれるな」
「悠くん。あたしからもお願い」奈央も見つめる。
「いやいや、お願いされたからって、できることとできないことがあるだろ」
圭介がいきなり机を叩く。
「わかった。ああ、わかったよ。そうまで言うなら、こうしよう。この秘密作戦が成功した暁には、お前ら二人付き合っちゃえ。許す。僕が許す。これでどうだ。付き合っちゃえ付き合っちゃえ」
本気でぶん殴ろうと思った。もう野球部なんて関係ない。人の心を見透かしやがって。こんな大事なことを、お前ごときが、どの口で。
「いいわ」
へっ?!
「いいわ。付き合う。悠くん、嫌いじゃないし」
おい。そこは「好き」と言うところだろ。
「よし、決まりだ。早速明日、秘密作戦を決行する。筋書きは僕が書く!」
立ち上がる圭介。奈央。つられて俺。三人は作戦成功を願って、空のコーラのカップを揚げた。
「おーー!」
は、恥ずい。