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昆虫物語みなしごハッチ

いきなり題名が「みなしご」である。すごい。現代ならコンプラ的にまずいだろう。だが、アニメ的にはこの設定はしばしば現れた。伊達直人の出身は「みなしごハウス」で、確か看板もそう書いてあった。みなしごだからガッツが湧いて、タイガーマスクになれたのである。

 で、ハッチであるが、実際は親がいないわけではない。母親の女王蜂はスズメバチに誘拐されたのである。その襲撃から辛くも生き延びたハッチは、母を訪ねて三千里の旅にでる。何しろ虫の世界なので弱肉強食である。悲しいエピソード満載の中、とうとうハッチは母親と巡り会うみたいな筋だった。最終回に限らず、毎回涙涙の大衆演劇のごときアニメであった。

 かように、みなしご設定はドラマ性を孕んだ陰影ある主人公を生む。アトムがカッコよかったのは、天馬博士によって作られるが捨てられるという、悲しい運命を持っていたからである。
 逆を言うと、ヒーローにぬくぬくとした家庭的愛情は似合わない。アトムが堕落したのは、お茶の水博士が、アトムに父や母、兄まで作ってしまったからである。(ウランは許す)  アニメじゃないが、ウルトラマンが堕落したのは、ウルトラの父とか母とかキングとか出してきてセブンを含めてみんな兄弟にしてしまったからである。それに、どう見ても、セブンは種が違うだろう。
 物語のドラマ性を高めたいなら、主人公を甘やかす親などは、いない方がいいのである。

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