ボリビアン・ラプソディー
ボリビアを目指すきっかけ、つまり僕が南米をフラフラと旅をするきっかけになったのはある女の子と世界の国の首都当てゲームをしていた時であった。その女の子はなかなか弱くて、イギリス→ロンドン、フランス→パリくらいは答えられるけどドイツやらインドとかになるともうお手上げであった。その時になぜか答えられなくなると、ボリビアをやたらと連発するのである。
「ロシアの首都は?」
「…うーん…ボリビア!」
「カナダの首都は?」
「えーっと…えーっと…ボリビア!」
こんな具合に。おまけにボリビアがどこにあってどんな国(というか国であることすら知らなかったわけであるが)であるかも知らないというのだから、呆れたもんである。ってなわけで(?)
「おっけ、んじゃ俺つぎボリビア行ってくるわ~。」
となり僕のボリビア行きは決まった。とはいうものの彼女を馬鹿にするほど僕もボリビアに精通しているわけではなかった。予備知識と言えば南米にあって標高が高い小さな国であるということであった。果たしてボリビアは標高の高い国であった。例えば階段を上り下りするだけで息があがる。女の子にカメラを向けて写真を撮っていたら”なに撮ってるのよ~!”と怒りを買ってしまい追っかけっこになったのだが、心臓が飛び出すかと思って10mくらいで立ち止まってゼエゼエしてしまった。逆にその女の子が心配してくれる始末であった。良い子だった。地球の歩き方(ガイドブック)には高山病に注意してください、と書いてあったらしいのだけれど、あいにく俺の歩き方には書いていなかったので高山病になった。幸いその時に一緒に行動していた日本人の旅人が高山病用の薬をくれて1日寝込んだら治ったけれど。
ところでボリビアは今ではなかなか有名な国で、それもこれもウユニ塩湖のおかげ(せい?)である。”死ぬまでに見たい世界の絶景”などという触れ書きでメディアにしばしば取り上げられているのだ。なもんだからけっこう日本人の大学生が卒業旅行に訪れていた。そんなこともつゆ知らず、日本人の大学生の群れに遭遇した時はなかなか驚いた。んでもってへそ曲がりな僕は、「ウユニ塩湖なんか行かないもんねー、あっかんべー」と突っ張っていた。(そもそもウユニ塩湖すら知らなかったのだけれど。)けれども会う人会う人にモーレツな説得を受けて、なんだか突っ張るのもアホらしくなり行ってみた。結論から申しますと…ハイ、行ってよかったです。説得していただいたみなさんありがとうございました。
景色の描写なんてウユニ塩湖に失礼だからしないけれど、ただひたすらに「いったいなんなんだ!ここは!」とひた走るジープの屋根の上に乗っかって1人で絶叫していた。水の張ったウユニ塩湖で、夕日を背景に1人でバシャバシャと車から流れる音楽に合わせて踊った。機会があれば是非行ってみてほしい。
自然の力というのは偉大で、環境が過酷な場所であればあるほど文明の入り方というか、テクノロジーの侵食(?)の仕方はかなりささやかなものである。ボリビアも騒々しい現代社会の流れからはいくらか距離を置いた、慎ましくゆったりとした国であった。目を引くのが街ですれ違う女の人たちの民族衣装である。髪型はみな三つ編みで、可愛らしい山高帽をかぶり、素敵な色合いのロングスカートを履いている。写真撮らせてよ、とカメラを向けるとみな照れて笑顔で逃げていくチャーミングな女性たちであった。
そのうちこの衣装が日本で広まり、ボリガールなんて名前がついて一世を風靡したりしてくれないかな、と密かに期待している。(おわり)