オカマとiPhone...の人(対談)

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(25歳♂・元青年海外協力隊員)

■オカマとiPhone

-ということで『オカマとiPhone』シリーズでお馴染みの慎吾くんです。(笑)

※別記事、『オカマとiPhone』見てね!

慎吾(以下、S):何回目だよ、この話。(笑)俺の中では決別してるわ。

-こないだ改めてオカマとiPhoneシリーズをちゃんと書き直してみて思ったのは、そういえば襲われたシーンについて俺知らねえな…って思って。まずはそこんとこの詳細を聞きたいと思うんだけど、どう?事件について覚えてる?

S:実はけっこう忘れてる。すごい落ち込んだのは覚えてるけど。(笑)

-あの時ってたしか俺たちハタチじゃない?あの歳でアレだけの事件ってのは、やっぱなかなかスゴイ。(笑)今後の人生における修羅場の予防接種としてはかなり良かったんじゃないか、って思ったよ。(笑)

S:そうかもね。

-オカマって言ってもいろいろいるじゃない?どんなオカマちゃん達だったの?

S:いや、ただの化粧した、きったないおっさん達だよ。

-それにしても欲張りだよね。若い男のカラダ貪って、おまけにiPhoneまで盗るなんて。強制わいせつ+強盗だね。

S:(笑)

-で、向こうはバイクに乗って…

S:そう。後ろから来た3人乗りのバイクが俺の2~3m前くらいに停まって、そいつらがショッカー(仮面ライダーの敵役)みたいに来て…

-あと少しでゲストハウスに入るってとこだったんだよね。

S:そう、そこのゲストハウスの鍵が厳重で、檻みたいな門を開けるんだけど、そこを開けようとした時にね…

-オカマちゃん登場。慎吾フリーズ?(笑)

S:凍りつくっていうかビビるよね。”よく間一髪で助かりました”とかいう話聞くけど、あれなかなか出来ないよ。地震とかなにかが起きたら何秒かは絶対みんなどうしよう!ってなるはずで、その時間のロスは大きい。

-みんなが思ってるほど簡単には逃げれねえぞ、と。(笑)

S:しかも向こうは普通に力は男だし。それで、俺はその門を背中にオカマ3人に囲まれて、ケツとか股とか何から何まで触られて…6本の手を避けきれるわけがないよね…

-阿修羅の仏像と戦ってるみたいな言い方。(笑)

S:ヤられてる間ずっと”wait!wait!!”って言うしかなかったよ…

-んで部屋に入ったら、おや?iPhoneがねえぞ?ってなった。たしか歩きながらiPhoneイジってて持ってるのバレたってのもあるんだよね。

S:そう、そこがミソでね。あんな薄暗い道で…旅の終わりが近づいてるってこともあってちょっと油断してたな。懐かしいな。

■青年海外協力隊

-こんなくだらない話しかしてないけど、実は俺たち国際協力団体に所属してて、その一環として東南アジアに行ったじゃない?

S:うん。

-んで、慎吾はそのあとインドとかにも行って、卒業後には青年海外協力隊でアフリカのブルキナファソに2年間行くわけだ。どうだった?

S:やっぱりあの頃の考え方からはいろいろ変わったよね。

-まず青年海外協力隊に行くまでの流れみたいなのを知りたいんだけど…

S:書類通過のあと面接が2回あって、ひとつは人格を見られる面接で、もうひとつは専門分野の人を相手に技術を問われる面接。重要なのが後者で、前者で落とされる人はほとんどいないかな。

-なんか青年海外協力隊って自分のウリみたいなのをアピールするって聞いたことがあるんだけど、慎吾はどんな売り込み方をしたの?

S:例えば、看護師とか教師とか、そういうしっかりとした技術とか資格を持ってる人達は、そういう部門で応募することができるんだけど…

-あ、窓口ひとつじゃないんだ。

S:そうなの。それで、やっぱ新卒で技術も経験もないから、そういったものがいらない分野に応募するの。それがコミュニティ開発っていう分野で良くいえば何でも屋で、悪くいえば技術不要な分野に応募するわけ。

-んで、そこに応募したわけだ。倍率はどれくらい?

S:誰でも応募できるから、そこが一番高くて6倍くらいだったかな。昔は10倍とか20倍とかもっと高かったんだけど、今はけっこう入りやすくなってる。

-で、勤務地はどうやって決まるの?

S:一応、第三志望くらいまでは書くんだけど、俺の分野は結局みんな志望外の所に派遣されることが多い。俺も英語圏に行きたかったんだけど…

-大学の時、フランス語学科だったしね。

S:うん、それもけっこう影響したと思う。もう面接の時からこれからアフリカ(多くは公用語がフランス語)がどれだけ国際協力の分野において重要か説得された。(笑)

-で、勤務地が決まって確か2ヶ月くらい施設にこもって語学研修するんだよね?どうだった?

S:メチャメチャ楽しかった。沖縄から北海道まで、同じ志を持った、いろんな職業の老若男女が全国各地から集まってくるからね。もちろん、語学は週6で朝から晩までだからしんどいと言えばしんどいんだけど…

-どんな人達がいたの?

S:ジュニア部門(39歳以下)とシニア部門(40歳以上)ってのがあって、俺より若い子は1人だけで、あとは全員年上。こないだまで山で自給自足してた人とか、大手広告代理店辞めて来た人とか…

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(ラオス・メコン川)

■ブルキナファソ

-んで、青年海外協力隊員として晴れてブルキナファソ(西アフリカの国)へ旅立つわけだ。2年間どんなことしてたの?

S:水・衛生の仕事をしていたんだけど、最初はけっこう大変で。まず、働いていたのが現地の市役所なんだけど、俺の行ったその町には青年海外協力隊が入った実績がなくて、お互いに”さて、どうしましょ?”って感じでスタートしたんだよね。

-あ、そうなんだ。その町には隊員は慎吾1人だけ?

S:うん。だから現地のスタッフ、それも関係ない人とかと一緒にひたすら町を散策して、何か出来ることはないかって探す所からはじめた。あと困ったのは、公用語はフランス語なんだけど、市役所の会議とかはもちろん現地語で交わされてたから、わからないことも多かった。

-うわっ、その状況ってけっこうすごいね。

S:で、最初はやっぱり助けてもらうことの方が多いんだけど、なんか時間が経つにつれて自分に時間割いてもらってる人たちに申し訳なくなって、最終的にはけっきょく市役所でできる仕事は少ないかなと思って。

-あらま。それでどうしたの?

S:小学校で、衛生教育みたいなことをすることが多かった。手洗いの歌とかダンス作ったり、あと向こうってトイレがすごい汚いのね?だから所有意識持たせてイメージを変えるために、みんなでトイレに色を塗ったりとか。

-やっぱり子どもってやり易いよね。

S:何よりまずブルキナファソはけっこう教育がしっかりしてるから、子供はみんなフランス語しゃべれるし、大人数が決まった時間と決まった場所に集まってくるし、活動のメドが立ちやすいんだよね、学校って。それに先生もすごい良い人ばかりだし。

-いいじゃん、いいじゃん。こうやって何をした?って聞かれれば、そういうプロジェクト的な事を答えざるを得ないと思うんだけど、もちろん一方で色々と感じるところはあったわけでしょ?

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(カンボジアのツーリストポリスで打ちひしがれる慎吾)

■国際協力

S:そりゃもう色々あるよ。例えば、よく言うけどすごい楽しそうなんだよね向こうの人たち。

-それは俺も旅してる時よく思った。なんかウチの国の人たちより全然イキイキしてるじゃん、って。

S:そうなんだよ。ごく普通の生活はすごく楽しいんだけど、それだけを伝えるヤツは嫌い。(笑)一方で病気とか怪我とかそういう非常事態が起きた時のセーフティネットが本当にない。何か起きちゃってもまずお金の工面がホント大変だし。日本では考えられないような絶望的な結末になることが多かった。そういう不条理はよく感じてたな。パッと見ではわからないかなり不安定な上に成り立っている生活っていうのはあるよね。

-それは日本にいると気づくのはなかなか難しいかもね。

S:向こうは仕事だって本当になくて、日本はめちゃくちゃ求人あるから、もちろん質的な違いはあるけど、仕事に困ることはないじゃん。まず日本がどれだけ恵まれた国か、っていうのは痛感したかな。あと、メシうまいし。(笑)

-コンビニだってそこら中にある。(笑)そう言われると、改めてアフリカに2年間いた慎吾にしか見えない景色ってのは絶対あると思うな。で、これからはどうしようと思ってるの?いわゆる国際協力の分野には携わっていくの?

S:せっかく関わった分野だからもちろんそういう気持ちはあるよ。ただ、何か具体的に自分にできることがあるわけじゃない状態で現地で働いてみて、技術とか経験の重要性を痛感したかな。本当に実際的に何か影響を与える人達ってけっきょく技術者だったり、何かしら力を持ってる人たちじゃない?そういったものを身につけるために国際協力っていう枠の中で働く、ってのはちょっと自分は違うのかなって思った。

-で、今webとかデザインの勉強してるんだよね。

S:うん。ITとかwebサービスで関われたらなとは思っている。あと、海外で仕事するとなると親が病気になったりしてもすぐには駆けつけられないじゃない?それにこれから結婚なんかしたりしたら、家族への負担はすごく大きかったりする。国際協力に携わってるスタッフの中にもそういう悩みを抱えてる人もいる。

-そりゃみんな葛藤はあるでしょ。あとはそこまでしてもやるのか?っていう覚悟とか生き様の話になってくる。

S:そういうのも含めていろいろ考えた時に、webかなって。

-すごくいいと思う。やっぱりこれだけ興味があっていろいろ考えてきたことだから、なんか続けて欲しいな~ってのはいちオーディエンスの意見かな。

S:どうもどうも。

-そのうち一緒に仕事とかしたいね。またどっかでオカマにiPhone盗られたら教えてね!(笑)

■おわりに


これでもけっこう編集したのである。夕方くらいに会う約束をしていたのに、当日になって別の用事があるのを思い出したなど言い始め、駅で合流したのは22時過ぎ。そこから行きつけの古着屋に行き(これは僕のワガママ。)コンビニに寄って部屋に到着。僕の夕食の残りのサーモンとアボカドの刺身と白飯を出演ギャラとして食べさせる。iPhoneのボイスメモを起動させペチャクチャと話し始めたのは23時頃だった。

実を言うと、こうして面と向かってまともに話すのはおよそ5年ぶりくらいで、文字になっているようにはスンナリと話が進むわけもなく、あっち行ったりこっち行ったり。お互いにチャチャを入れ、話を遮りケラケラ笑い、なかなか本題へと進まない。やっとこさこちらの欲しかった話が終わり、時計を見れば夜中の1時30分。(しかもノンアルコール)

そのままボイスメモを再生し、とっ散らかった会話の文字起こしはそれはそれは大変で、けっきょく寝れずにそのまま仕事へゴー。なんてこったい。

それでも、iPhoneシリーズ10本+今回のインタビュー5本=計15本もの文章を彼のおかげで書けたのだから、そこに関しては感謝しなければいけないのかもしれない。コップンカー。多感な20歳のある時期を異国で数週間にもわたって一緒にいたからなのか、はたまた元々のヤツと僕の相性なのかよくわからないけれど、ヤツと僕の間には愛憎入り混じるなんとも言えない距離がある。まったくやれやれ、てやんでい。

またヤツが何かしでかしたら一目散に駆けつけて、みんなに言いふらしてやろうと虎視眈々と狙っているのだが…次回はいつぞや。(おわり)

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