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授業は準備,コミュニケーション,ふりかえりの質で向上する?|2024スプラウト福岡女子商業高校②

10月21日から始まる週は連戦続き。月曜日は飯塚,火曜日は苓北,そして10月25日(金)は福岡女子商業高校での授業日。おまけに10月27日(日)は苓北中学校の出店日で天草へ移動するという厳しいスケジュール。

ご承知の通り学校のスケジュールはどこも似ていて,定期試験,運動会,修学旅行等々はだいたい同じ時期にやってくる。それでいて授業をどこに組み込もうかとすれば,だいたい同じようなタイミングになってしまう。その分学生には大きな負担をかけていることになるが,各学年それぞれの学生がそれぞれの特徴を持ってよく関わっている。

特にこの記事で取り上げる福岡女子商業高校の場合,ゼミ全体としての取り組み位置づけていることもあって中心期たる3年生だけで臨んでいる場合と異なり,統制が取れているように思う(もちろんそうでない学校においても彼・彼女たちはしっかり授業をしてくれています)。それも事前準備ミーティング,授業内での約束事決め,到達点・及第点の設定と細かく授業内容を決めているからであって,そういったちょっとした決め事を事前にしておくだけでも精度が変わっていく(ということを学生が理解できるように指導しないといかん)。

ということで,今回はサラッと福岡女子商業高校(女子商)での2024年度第2回の授業の様子を残していきます。

授業内容・クラスの様子

今回のテーマは戦略論。差別化とコストリーダーシップについて話す。もう何度も話をしている内容ではあるが,今回はレジュメは共通,講義スライドはクラスごとに基本形をいじって喋りやすいようにするというルールで授業に臨んだ模様。曖昧な書き方になっているのは,この打ち合わせに私は一切関与していないから。北海道へ出張している間に,学生たちがゼミの時間に集合し,自分たちで約束事を決めている。

1組

授業では「戦略」だけを取り上げて喋るのではなく,理念→戦略→計画という一連のプロセスに従って事業を構築し,実践するのだということを強調して教えている。

というのも,第1回での「アントレプレナーシップとコレクティブ・ジーニアス」の回では,アントレプレナーシップを「個人の一歩踏み出す勇気」と定義し,コレクティブ・ジーニアス(集合天才)を「組織的に成果を実現するための考え方」と定義しており,そこに立脚したアントレプレナーの想いが事業の起点にある,それが経営理念だと説明している。

2組

それを腑に落とすために,経営理念を策定するワークに入る。飯塚や苓北,その他の地域でマルシェなり,販売実践を持つプログラムでは,自分たちの店舗の経営理念を考えるワークを行うが,女子商では特段そうした接合を予定していない。あくまでも授業の中で会社経営の進め方を勉強するという考え方に立っているため,このワークが抽象度の高いものになった。

このあと戦略を考えるために定番のお祭りワークを実施するのだが,販売実践がないために理念を策定するワークについて学生はこのお祭りワークとの接合を図ろうとした。授業全体の構成を考えた時,そして経営理念を策定すること,言語化しておくことの重要性を理解してもらうために,ここでそのあとのワークに紐づける形にしたいというのはよく分かる。しかし,これが抽象度が高すぎて,返って難しいものにしてしまった可能性はある。すなわち,テーマ設定が高校生にとってリアリティがないものになってしまった可能性があるということ。

とは言え,この授業でも「失敗して良い」「失敗して君たちが学ぶことが大事だ」と送り出しているので,これは今後の課題として修正すれば良い。

こうして第1回と第2回の内容を接合しつつ,授業は経営戦略の内容に入っていく。

3組

経営戦略は定番のM.ポーターによる差別化とコストリーダーシップの2つの戦略が大枠であることを説明する。その具体例として2024年度はアイスクリームの例をよく出している。

というのも,これは苓北中学校での授業の補助資料として私が作ったものをベースにしているからだ。天草・苓北という場所で生活している中学生にどうやってその概念を教えるか。彼・彼女たちが普段見ているであろうもの,知っているであろうもの,感覚的に差別化とコストリーダーシップとわかるものを考えたときに,ハーゲンダッツアイスクリームとガリガリ君が頭に浮かんだ。

4組

以来,今年はこれを説明例として使うケースが増えている。加えて,過去の『スプラウト』を主導的に進めてくれた学生からのアイデアで,女子高生向けにデパートコスメとコンビニコスメといったような例も出てきたりする。時に説明を簡略化しすぎて大事なポイントを見落としてしまうような場合もあるのは心配だが,こうして人のためにどうすれば理解できる事例を出すか,どうやって腑に落としてもらうかを考えることはマーケティング思考を学ぶことにつながると言えるかもしれない(適当)。

5組

こうした事例の説明を織り交ぜながら,授業は定番のお祭りワークで周辺店舗,位置,価格帯,手持ちの商品をベースに経営戦略とマーケティングのエッセンスを学ぶ機会を提供する。

このワークの内容も各回で少しずついじっている。ある回は自由に商品を選択できるように,ある回は周りとあえて同じものを売る,ある回はいくつかの異なる商品から選択するといった具合に変えていくのだが,なかなかピンと来るものができあがらない。女子商の場合は高校1年生を対象にしており,どのレベル感のモノを提供することが彼女たちにベストなのかをまだ学生が探りきれていない感じもある。

もちろん200人ほどの高校生全部にフィットする授業を作るというのは簡単ではないし,それは到底無理。無理であってもチャレンジしようとすることには意味があるが,どこかにハマっても,どこかにハマらないというのが普通だ。実際,その後のふりかえりでも好反応もあれば,微妙な感じで終わってしまったところもあるし,思った以上に高校生の反応が鋭く,ワークを簡単にし過ぎたというコメントもあったくらいだ。

6組

理想を言えば,その様子を見ながら担当している大学生がレベル感を調整する,もう少し先まで考えてもらうように導くなどできる方法はいくらでもあるように思うが,それを学生に求めるかということでもある。せっかくだからそういう声かけをしても良いのではないかと思うが,授業やるだけでも精一杯だしなとか。昔だったら間違いなく要求してた。

とこんな感じで女子商での第2回は終了。

ふりかえり・所感

こうして終わった第2回授業。

授業の内容もさることながら,教壇に立つ大学生も成長を感じさせる場面があった。それまでどこか自信なさげに喋っていた学生が,今回はリベンジと言わんばかりに声を出して自信持って話をしていた。きっと相当練習したに違いない。第1回,月曜日の飯塚での様子とは打って変わった様子だった。

これは余談に過ぎないが,この『スプラウト』を始めたキッカケはこれまでもこのnoteで書き綴ってきたように,女子商の前校長からの依頼,同僚の先生が行っていた大学生を中高生の教育現場に飛び込ませるという実践が絡み合ってのことだが,「学生が授業をする」効用というのは私自身の学生時代の経験による。

もう30年前になるが,私は学生時代に京都で観光ガイドサークルに所属していた。歴史,神社仏閣が好きだということと,お給料がもらえるという趣味と実益を兼ねたサークルだったが,ここで「ガイド」という仕事に就いたことが大きかった。バスに乗る,寺院で話す,長期休みは国宝・重要文化財の特別公開で話す。時に40名の小学生に対してガイドをすることがあれば,時にお茶や庭,襖絵に造形がある個人にも話をする。その話すという行為をするために,たくさんのインプットをし,原稿を認め,人の動きを注視し,声掛けや目線で相手を適切な方向に導くということをやってきた。

今で言うなら,プレゼンテーション能力はおろか,ファシリテーション能力,言語化,学習方法の確立などを大学生のときに実践で身につける機会があった。それがこの『スプラウト』で大学生を教壇に立たせようとした理由でもある。

ただ,学生はどうしても「うまく喋れる」ということばかりに注目してしまい,大切なことを見落としてしまう。どうすれば伝わるか。自分のキャラクターを活かしながら,授業を聞いている生徒とどうコミュニケーションを取るのか。そこが一番大切なのに喋ることばかりに気を取られてしまう。ファシリテーション能力を身につけることに意味があるのだ。

準備をしてそれを吐き出すだけでなく,準備をした上でさらに現場でなされるべきことがある。

そのためには毎回のふりかえりが大事だし,それを次の機会に必ず表現するという気概が必要。当のサークルでも長い「反省会」が常だった。が,それは後輩にコメントをするというコメント力も必要な場だったし,先輩や後輩がどういうコメントをするかを通じて彼・彼女たちが何を見ているのかを学ぶ場でもあった。

今同じことをやったら「ハラスメントだ」「昭和だ」と言われるかもしれないが,適切な方法でふりかえりをやらないがゆえに何が起きているのかを考えれば,この記述を通じて何を言いたいかはきっとわかるだろう。全くふりかえりの質が深まらない,コメントの質が上がらない理由は,観察する,コメントする,相手の話を聞いてインサイトを引き出す深さが足りないからだ。もし学生に対して求めることがあるとすれば,今の時点ではこの1点と言えるかもしれない。

授業は,先生たちからもコメントを頂いたように,かなり良くなったように思う。が一方で,まだまだ課題があるとも言えよう。創P,プロジェクトと忙しい時間が続くが,今のままで満足はしてはいけないように思うわけだ。

頑張ろう。

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