アントレプレナーが見えている世界はどんな姿?:起業家出身教育者や先進的漁師との出会い
今日(1/27)は佐賀→雲仙という強行軍。これを日帰りでグルっと回ってこようと言うのだから、正直どうかしている。
新年に入ってからあまりにもいろいろなところへ出かけるので、妻氏にも体調を心配されている。が、精神衛生上はこうしている方が遥かに良い。今日も新たな出会いを得て、自分の現在地、為すべきことが何かを考える機会を得た。
今日もメモ書きの延長のようなものだが、自分の記録として晒しておく。
起業家出身教育者との語らい
午前中は佐賀県内にある私立高校を訪問。ここ1-2年、周りの人たちから名前が出てくる高校。「シリコンバレーで起業経験がある副校長がいる」との話を聞いて、ツテを伝ってお会いした。
会って数分。久しぶりに体感するスピード感。
これまで行ってきた取り組みについてはそこそこ,Why Entrepreneuship Education?についての質問が立て続けに出てくる。育てたい人材像,その方法について。
彼曰く「起業をするのはリスクをリスクと認識しないバグがある人」とのこと。他方で,私はアントレプレナーシップ教育を行うのは多様な進路を踏まえた上での一歩踏み出す勇気であり,事業構想であり,その実現をいかに図るかを考えているとお伝えした。
学校教育の現場にいるので,急進的にアントレプレナーシップ教育,あるいは「狭い起業教育」をする難しさがあることは認識しつつ,起業家として,投資家としてできることはないのか,福岡のポテンシャルからすればまだまだできるとのご指摘も頂き,久しぶりにヒリヒリする時間を過ごした。
次の一歩に進めるか。まだまだレベルを上げなければいけない。どう進もうか。
先進的漁師との出会い:株式会社天洋丸@雲仙・南串山
続いて車を2時間飛ばして、島原半島の西側、小浜温泉近くの漁村へ。九州移住ドラフト2022に雲仙市球団として出場した株式会社天洋丸を訪ねて。
予備知識全くなしで言ったので十分に理解できていない部分があるかもしれないが、天洋丸はカタクチイワシを獲り、煮て、干して、袋詰めして出荷するまでの一連の工程を施して煮干しを生産している。
長崎県はいりこ(煮干し)の生産量日本一。今年度から長崎県庁水産部からの委託を受けて、県が進める漁家の経営計画の策定と実行、その成果を測定する研究を進めている。その政策的な意義がどの程度あるのかを検証するものだが、こうやって現場を見て、話を聞くとリアリティが増す。
着くや否や、船に乗り込んで沖に出ること約5分。生簀にはたくさんのサバが。別の生簀には鯛が。カタクチイワシを餌に与えたサバは「NIBOSABA」とブランドを与えて販売している。
他にも天洋丸では加工品を製造、販売している。
例えば、「じてんしゃめしの素」。自転車飯というのは、昭和2年に島原半島を舞台に日本で初めて行われた自転車レースにちなんだもので、新鮮ないりこと乾燥野菜を加えて作られた醤油飯。この地域の郷土料理で学校給食にも出るそう。これを炊き込みご飯のもとにして販売。
あるいは漁で獲れたカタクチイワシ以外の小魚を干してミックス煮干しとして販売。これには中に入っている魚の写真が一覧表で添付されていて、子どもたちが魚を学びながらおやつとして食べられるように工夫しているそうだ。
こうした製品は下記のリンクから購入できる。ぜひ一度ごらんあれ。
とは言え、漁師の担い手不足は課題としてあるようで、漁師になるのは地元の人ではなくて他の地域から漁師になりたい人であり、海外から来る技能実習生だったりする。ただ、天洋丸では立派な寮を建てていて、そこで共同生活をしている。また協力漁師さんもいるそうで、7隻の船で漁に出ている。
また、インドネシアから来た実習生たちが寮の前で唐辛子のような形状をしたサンバルという食べ物を育てている畑もあったり。こうした中で生まれた商品が煮干しとサンバルを使った香辛料「ニボサンバル」だ。これがまたご飯に合う。
こういう戦略が取れるのも、天洋丸が明確なミッションを掲げているから。
「水産資源の価値を高め 人々を笑顔にする」
こうした考え方が浸透して形になり、価値を創り出して天洋丸に関わる人々が豊かになる。今日はあまりお話をしっかり伺う機会がなかったけれども、ここに至るまで試行錯誤があったに違いない。ご家族のバックグラウンドをお聞きすればここに至る価値創造プロセスを構築できる理由もなんとなくわかるけれども、アイデアベースで終わるのと形にするのとでは全然違う。ある種次世代型漁師(漁業者)なのだろう。
ご家族の中でも、特にお母様の事業に対する意欲は高くて、話の端々に感じる思考レベルの高さには勉強になることばかり。短い時間ではあったけど、足を運んだ甲斐があった。またぜひお伺いしたい。
再び天空のコワーキングスペースへ:HUB雲仙
続いて最終目的地として、雲仙温泉郷のコワーキングスペースHUB雲仙へ。前回訪問時は雲仙を襲った豪雨当日で、あと一歩遅かったら土砂崩れに巻き込まれていたかもしれない。以前から動向を気にしていたのだけれども、このタイミングで訪問できた。
昨年訪問した際の記事はこちらを参照ください。
今日は雨でなくて幸い。が、霞んで西日が沈む様子は全く見ることができず。が、前回訪問からしばらくしての状況をお聞かせ頂いた。感染者数が増加しているのは不運だが、このタイミングでまたじっくり今後の戦略を練っていきたいとのこと。
また、ここのオーナーさんとゼミ2年生が知り合いということもあり、昨年実施したSPINNSとのコラボ企画などもご存じ。それもあって、このコワーキングスペースをゼミの拠点(とびゼミ生と名乗ればその場所を拠点として学生活動をサポート頂く)にすることをお認め頂いた。ありがたや。
ここ最近繋がりができつつある各場所で若い担い手が求められている。が、それは彼らを単なる人不足の穴埋めとしてではなく、地域でイキイキと活躍できる舞台にしたいと考えておられるパターンが大半。各地でそういう舞台が整いつつあることを実感する。機会はいくらでもある。
見えている世界は違えど
片やシリコンバレーという世界的な先端的なスタートアップ都市での実業経験を持つ教育者。
片や島原半島にある小さな漁村で価値を創出する漁業に取り組む家族(企業)。
今日1日で見聞きした世界の振れ幅が大きくて脳みそがパニックになりそう。確かに世界に与えるインパクトと言えば違うけれども,どこに軸足を置くのかが異なるだけ。いずれにしても,今ある状況をより良くするために何がなされるべきかを考えて,日々実行をする実践者であることには変わりない。見てきた,あるいは見ている世界は違えどだ。
働いた成果は「インプットに価値を足してアウトプットする」、その引き算で成り立つ。その生み出した価値の分配を受けて,自らの生活を成り立たせる。インプット(仕入)は誰かが生み出した価値を買い取り,アウトプット(売上)は自らが生み出した価値を他者に買い取ってもらうということ。
自分の持ち場で,自分の為しうる範囲で,価値を創り出して,持続可能にしていく。
それは仕事の基本のようなもので,キャリア教育の基礎になるような話だ。生きる術を学ぶと言っても良いだろうか。が、果たしてどうだろう。学校教育は単にインプットして、言われたことを鸚鵡返しに吐き出すだけにはなっていないだろうか。それでは価値を生み出すという発想には至らない。
いみじくも今日訪問した高校で話したことはそんなことだった。そして,それは雲仙で出会った家族とその仲間の皆さんにも言えること。各地で活動されている皆さんもそうだ。
スタートアップは課題を新たな技術、方法で解決しスケールするから、地域のスモールビジネスは豊かな天然資源を活用しつつ、限られた経営資源を使っているから、イノベーティブな思考、一歩踏み出す勇気=アントレプレナーシップが求められる。
生きることは、自ら創出する価値をいかに創り出し、他者が認めて引き渡すという行為が連続するということだ。しかも、それをパートナーシップの中で行う。
なんだ、当たり前じゃん。こう言われそうなのだが、そういうマインドセットを伝える仕掛けが足りていない。なぜこうなってしまったのだろうか。その裾野を広げることが私の仕事だということを再認識できた出会いだった。
今日はきむ兄のおかげ。ありがとう。今度は佐伯に一緒に行きましょう。
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