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やっぱり「わたしたちはなぜここにいるのか?」に立ち返る|2023スプラウト&kAIware⑤福岡女子商業高校

いよいよ2023年度の高大連携アントレプレナーシッププログラムも大詰め。今日はこのスプラウトを2019年に開始した高校である、福岡女子商業高校(女子商)出迎える最終回であった。

ここでも何度か紹介してきたが、このプログラムは2019年に前校長からの依頼を受け、高校生が大学なり、専門学校なりの進学を視野に入れて学業に励み、入学者数を確保することを狙いに始まったもの。そしてゼミの有志を集め、創業体験プログラムで学習するプロセスを高校生にわかるように授業するという取り組みを始めた。そのうちこれが拡大し、この女子商だけはゼミ全体で取り組むことにしている。今日も3-4年生はゼミの活動時間として、2年生も数名興味を持って参加してくれている。

このプログラムを思いつけたのは、勤務先同僚の先生が以前取り組まれていた「書く力を鍛えるプログラム」(通称:書くP)であり、当時移籍してきたばかりの私に声をかけてくださり、こういう方法で学生を動機づけできる方法があるのかと、機会を狙っていたということもある。

以後、ゼミ5期生に至るまで、そのプログラムにゼミ生がお世話になり、鍛えて頂いた。そして今日はたまたま、ゼミ1期生OGで書くPでも中心的な活躍をしていたIさんが女子商にわざわざ出向いてくれた。

10年前と変わらない撮影風景。

突然のゼミ草創期のOGが現れてゼミ生もびっくりしただろう。冒頭で私が話す様子を見て「先生変わってないな」と思ったのだそう。ま、基本変わらない。人間そう簡単には変われない(笑)

さて、そんな前置きはさておき、最終回の授業の様子はいかに。いや、今回はふりかえりを取り上げて述べるべきかを迷うところ。とにもかくにも、以下お読みください。

なお、これまでの女子商での取り組みは下記のマガジンをご覧ください。

プレゼン最終回を迎えたkAIware

まずはkAIwareから。先日の飯塚高校での経験を活かして、最終プレゼン発表会をブラッシュアップ。さらに授業の進め方にも工夫をして、最終回に臨む。

この日を前にこんな図を出してきた

上図はゼミ3年生が作成したこのプログラムのプロセス図。事業を作るということがどのように行われるのか、この講義がどうしてこの手順で進むのかを端的に表している。もうここまでできるようになってるんだから、どこに出ても大丈夫。あとは少しの自信と経験があればどうとでもなる。

プレゼン発表会前のクラスの様子

女子商マルシェが終わったばかりで若干燃え尽き気味の2-3年生。授業への集中度合いも測定しかねる感じ。なぜこれからプレゼンしなきゃいけないんだっていうネガティブな空気感を感じつつ(笑)、授業が進んでいく。なぜこのプログラムなのかを説明したり、最終チェックの時間を作ったりと、それぞれのクラスでそれぞれの時間が過ぎていく。

2-2の審査員の皆様(笑)

プレゼン大会を盛り上げるため、学生たちはここでもひと工夫。飯塚高校と同様、学生が審査員で評価するだけでなく、高校生にも持ち点を渡して相互評価できるようにして、プレゼン時間を緊張感を持って参加できるようにと工夫をしていた。が、中には無記名であることを良いことに適当な評価が混じるのはよくあることで(笑)

人間関係を良くするためのアプリ

プレゼンの内容も飯塚高校では時間管理アプリ縛りかというくらいの時間管理アプリばかりだったけれども、今回はアプリだけでなく、女子商生が持つ悩みを製品で解決できないかという提案もいくらか見られた。

ペルソナ作ってもキラキラしてる

ペルソナシートもこんな感じ。少しでも可愛く自分らしさを伝えようと、ちょっとした絵を使ってみたりしている。ところ変われば文化も変わるのでこういうところも見ていて面白い。

今回3クラス(2-3年生の進学クラス)で実施してきたが、初めて生成型AIを活用したこともあり、トラブルが発生することもあった。が、繰り返し起こるトラブルにイラついても仕方ないので、それを織り込みつつ、着実に講義が進んだのは学生の力量が高まったことを意味しているのだろう。もちろんカリキュラムや時間配分がこれで良いのか、レベル感や講義構成や的確な言葉掛けなどをどうしていくかには改善の余地が多々ある。

が、3年生のプロジェクトチームの貢献もあって、素晴らしい講義の基礎が固まった感はある。次年度以降どのように進めていくか。この春休みでじっくり考えていくことにしようか。

自分の学びをどこまで言葉にできるか。相手に伝えるチャレンジをしてみよう:スプラウト

一方、アントレプレナーシップ教育を続けてきた「スプラウト」はどのような感じで進んだのだろうか。

今回は最終回ということもあり、3年生はこの学びを未来にどう繋げるかというライフプランとのつながり(キャリア教育重視)を、1年生は来年度の「女子商マルシェ」にどう繋げるのかを検討する機会にした。

これまでの授業のふりかえり

3年生の3クラスは緩い感じで授業が進む。先月は進路決定期でピリピリしていたのに、今日は進路も決まって学期末で集中力を欠く感じ。このアップダウンを受け入れつつも、2コマでふりかえりが進んでいく。ほんとあるクラスはずっとうるさかった(笑)

1-1はバシッと講義に則ったふりかえり

1年生の2クラスは、それぞれ「スプラウト」で学んできた知識を確認し、女子商マルシェで携わった店舗や運営側なら運営側としてどう携わったのかをふりかえりながら、理念(抽象)→戦略→計画(具体)の行き来をするワークを仕込んでみたり。正直1年生にはタフな内容だっただろうが、よく頑張ってくれました。

1年生の2クラスは統制が取れて淡々と進む感じ

講義の中ではマルシェに関する本音ベースの話もチラホラ聞こえたのも興味深い。

以前のマルシェではクラスごとに2店舗を持ってAチーム、Bチームと分かれて店舗運営に携わっていたものの、昨年度からは学校が意図を持って店舗内で3学年が混ざるようにしている。が、それではうまく意思疎通が図れない部分があって、数名の生徒から元に戻して欲しいというニュアンスの意見が出たそうだ。が、その提案が受け入れられず、当該生徒のモチベーションがダダ下がり。

ここで正論を持って見解を述べて理解を求めるのも難しいというのが思春期の難しいところ。理屈と感情がゴッチャになってしまう。

もちろん現場の声として学校側がそれをどこまで受け入れるかどうかという問題もある。まだ体制変更をして2年で簡単に変えることもできないし、教育効果の測定もできなければ判断ができない。理屈を通せば通すほど、距離が離れていく感じ。本当に教育は難しい…。

自分たちはなぜここにいるのかを伝えるスライド

今回5クラスの「スプラウト」クラスで最も講義の工夫をしてきた1-1では、最後の最後で自分たちがなぜここにいるのかを画像を交えながら説明。表紙画像にあるように、大学生が高校生に授業することで自分たちも学び、高校生とともに解を探索していく学びを深めようとしているのだと説明してくれた。

このクラスは学年に設置された2クラスのうちの1つで、中には将来勤務校に行きたいと言ってくれている生徒もいる。こうして自分の少し先の未来をリアリティを持って考えられている機会を作ろうとは言ってきたが、こうして学生が工夫して自分たちのいる意味を説明してくれるというのはありがたい。

ふりかえり:わたしたちはなぜここにいるのか?

こうして女子商での2023年度最終回を終えた。スプラウトを始めて5年。今年は学生の負担を下げるために講義の形式化(パターン化)を進めることを目標にして無事に終えられそうだ。これもこれまでの卒業生,4年生が培ってきた経験,残された資料のおかげだし,パターン化することによってどこでも同じように授業をするというレベルには引き上げることができたように思う。

一方で,形式化が進んだあまりに高大連携における大学生の役割がどちらかというと「教師」的ポジションに移動してしまったのではないかという意見もあった。これは,女子商OGで今期からゼミに入ってきた2年生の弁ではあるが,確かに写真やnoteでふりかえるとかつてのコラボ授業はもっと大らかで,楽しそうにグループワークをやってきた感がある。この間にできあがったものと残されたもの,失われたものが何かを考えるという思考訓練をするのも悪くはないだろう。レベルが上がることで何を失ったのか。

ひとしきりふりかえりを終えた後,最後に少し長めに時間を取って,このプログラムに賭ける思いのようなものを話させてもらった。このプログラムは単に教育効果を狙っているだけではない。他にもたくさんの意味をかけてプログラムを構成している。それが周りの人に理解されるとも限らないし,成果が出るのだって何十年も後かもしれない。が,即効性があることをそれっぽくやることにあまり意味を見出していない。

それでも,スプラウト1期生がゼミ生として入りもう講義を担当しているし,12/16スタートの「おおいた起業体験プログラム」には昨年壱岐商業で参加してくれた大学1年生が講義担当になっている。来年度もいくつかの高校から勤務校にOGとして入学してくるし,そうした流れができつつある。

先日,投資家の村口和孝さんと話したとき,「5年でここまでというのをどう評価するか」という話を頂き,「やっぱり中央でやらなきゃね」という話になった。が,そのあと女子商マルシェを終えてふりかえりをしている大学生をご覧になって「あの大学生を見ていたら,飛田先生は福岡を離れられないね」と私がこの活動に取り組んでいる意義を理解してくださった。確かに九州で過ごすことで中央に比べればゆったりとした時が流れていると感じる。が,このプログラムの価値が徐々に浸透し,いつか花開く時が来るのはむしろ地方で思っている。

ここで学び,自ら進路を切り拓き,自分の人生を自分で歩めるようにする。

そのフィールドが地元であれ,都市であれどこでもいい。ただ,地域の高校生たちに大学生というロールモデルを示すことが,彼・彼女たちを導く何かになるのだったらそれで十分かもしれない。そういう志を持って私はチャレンジしようと思っているし,ぜひみんなに協力して欲しいという話をさせてもらった。果たして来年度もこのプログラムを続けていられるか。

次のステップに進まねば。

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