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ボンデージ撮影⑩

Tとの撮影は約3年の休止後だった
その間も撮影したいと思えるようなモデルさんが見つからなかった
引っ越しをしたので都内へ行くのに倍以上の時間がかかるようになったという理由もある

見つからなくても拘束具や衣装は購入している
気になったものは買えるうちに買っておくのが鉄則
後回しにすると買いそびれてしまう


休止中に購入した拘束具と衣装を使う時が来た

「じゃあ次はこれに着替えて」

渡したのは顔の部分が丸く開いている黒い全身タイツ
小柄なTにも合うようにSサイズ
Mサイズのものは既に持っていて何度か撮影で使っている

脱衣所から出てきたTは頭部を被らず前後逆に全身タイツを着ていた

「それ、前後逆です
ファスナーのあるほうが後ろです」

「あっ、なんか変だと思った」

わざわざ教えなくても顔のところに開口部があるので分かると思ったんだが…

再び頭部を被らず出てきたのでそのまま数枚撮影

「じゃあ頭にも被ってもらうよ」

背中のファスナーを少し下げて頭部を被せファスナーを閉じる
顔の位置と開口部を合わせる
首回りの生地がたるんでいる
○国製のものはやっぱりダメだな
作りもしっかりしていない

「首のところがたるんでますね」

「首輪を付ければ分からないんじゃない?」

ってそういう提案を自分からするの?
付けて欲しいなら付けますよ
まぁ言われなくても付けるんですけどね

赤い犬の首輪を付ける
手枷と足枷は左右が固定されているタイプ
両手は後ろで固定する
ベッドに座ってもらったところで再び鼻フックと
今度はアングルワイダーと呼ばれる開口器を付ける
口が開きっぱなしになり鼻の穴も丸見えになる
とても無様で可愛らしい

無様な姿の女性を可愛らしいとか愛おしいと思う感覚は
こういう性癖を持っていない人には分からないだろう


アングルワイダーを外してさっきとは違うハーネスボールギャグを付ける
これも休止中に購入したもので海外のアダルトショップから通販した
黒いベルトに赤いゴム製のボール
日本のものと比べて海外のボールはサイズが大きい


ギャグというと洒落や冗談、笑わせるためのセリフや動作などを思い浮かべる人がほとんどだと思う
本来の意味は英語のgagで『猿轡』と『言論の抑圧』などを意味する言葉


「さっきより強く引っ張るよ」

と言って鼻フックを固定するゴム紐を締める

うん、良い表情だ

ただ、撮影しているうちに前髪がはみ出してしまっていた
こういうのはきっちり隠しておかないと
丁寧に開口部を整えてはみ出た前髪を頭部にしまう

思い通りの画が撮れた

大きいボールを咥えていたので疲れただろう
時間はまだたっぷりあるから少し長めの休憩をとる


休憩中の会話で年齢の話になった

「3年ぶりくらいの撮影なんですよ
私ももう○○歳ですから疲れちゃって…」

「えっ!30代後半くらいかと思ってました」

40代前半に見られる事はあっても30代に見られるような年齢ではなかった
メールには年齢も記載してあるのだが、モデルさんたちはよく読んでいないらしい
当日に撮影内容をまた説明するという事も何度かあった


「次はこれ」

そう言って手渡したのはお馴染みの体操着とブルマ
体操着はいつも使っているものより一回りサイズが小さい
先にメールで身長を確認していたので小さいサイズを用意していた

着替えて出てきた時には拘束されている時の表情はない
スクール水着の時と同じはにかんだような笑顔
拘束せず立ったままの前後を撮影する

「体操着の裾をブルマの中に入れて」

どのモデルさんも初めは体操着の裾を出してブルマをできるだけ隠すようにしている
それだけ恥ずかしいアイテムである
という事を承知していて指示を出す

露出の多い水着などの衣装よりブルマを恥ずかしがるモデルさんがほとんどだった
その恥ずかしがる表情も撮りたい
恥ずかしがってくれないとこちらのやる気も失せてしまう



2つマルカンが付いた黒い首輪と手枷足枷を付ける
手枷は首輪に付いたマルカンと繋ぐ
両足は左右で固定する
口が開いたオーラルマスクを付ける
数枚撮影して右手と左足、左手と右足を繋ぐ
こうすると身体の正面で手をクロスする形になる

鼻フックと今度は口のフックも付ける
口を左右に広げるフックで、これも無様さが楽しめる
他にもいくつか口枷を替えて撮影した後の休憩

世間話をしているがTはまだ体操着とブルマのまま

「何歳くらいまでブルマ穿いてたの?」

「高校生の頃まで」

ん?
20代後半の年齢だともうブルマ採用校はなくなっている頃では?
まぁいいか
せっかく楽しいのに邪推しても時間の無駄になる


最後の衣装は紺色の長袖レオタード
これも今回の撮影で初めて使う
3年ぶりの撮影なので衣装や拘束具は未使用のものを使いたかった

赤い犬の首輪にはリードを付ける
これも毎度お馴染みのペットプレイ

リードも付けると何故かモデルさんたちは
自分から四つん這いになる
拘束なしの撮影でも首輪とリードを使った事が何度かある
その時も例外なくペットらしい振る舞いをしてくれる


3種類の口枷を使って撮影終了
顔に跡が付いていないか確認して、一応蒸しタオルを渡す
久しぶりの3時間撮影はかなり疲れたが、心地良い疲労感だった

「この後も◯◯で撮影があるんです」

若い人は元気だなぁ

「また撮影しましょう」

「はい、連絡下さい」

駅前で別れて車で自宅へ向かう


それから2ヶ月後

撮影の約束をしたがTは来なかった

待ち合わせ時間を過ぎたのでメールを送る

『◯◯時◯◯分まで駅前で待ってましたが
何も連絡がないようなので帰ります』

帰りの車中でメールの着信音がスマホから聞こえた
信号待ちしている間に読む

『本当にごめんなさい
目覚ましかけ忘れて二度寝してさっき起きました
本当にすみませんでした』

絵文字の入ったメール
謝罪しているが誠意は感じられなかった


Tとの2回目の撮影はなくなったので、この時の撮影が最後となった
それまでにもドタキャンは数え切れないくらいある
初回ならまだしも2回目以降の撮影でも数回ある


待ち合わせ時間に遅れないよう、最低でも30分前には到着するようにしている
初めて訪れる場所だと1時間以上前からいる時もある
万が一にも遅れそうな時には事前連絡を必ずする
どれも私にとって当たり前の行動

私とは約束という言葉の重さが違うんだろう

約束という言葉の意味も違うんだろうか…