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コロナウイルスとエドワード・ホッパーの孤独
新型コロナウイルス問題による自主隔離が増えるアメリカにおいて、画家エドワード・ホッパーが注目を集めています。
we are all edward hopper paintings now pic.twitter.com/gpcmSiavkD
— Michael Tisserand (@m_tisserand) March 16, 2020
「ガソリンスタンドや映画館、ドラッグストアなど、アメリカの日常風景をアート界で熟考される対象にした」とも評されるホッパーの作品は、長きにわたって「都市の孤独」と紐つけられてきました。たくさんのモノや人に囲まれているのに、孤独を感じてしまう……そんなフィーリングは、インターネットが普及した今でも健在でしょう。そして2020年、新型コロナウイルス問題によってニューヨークなどの大都市は静寂の状態となり、多くの人々が自主隔離につとめはじめました。人影まばらな街、静かに家にこもる人々。まさにエドワード・ホッパーそのものな世界が現出したのです。とくに代表作”Nighthawks”改変・リブート画像は、ソーシャルメディアのみならずマスメディアからも注目を浴びました。
oldies but…https://t.co/osNH0oPtfd#Bleibtzuhause #StayAtHome pic.twitter.com/J2vifxfKuK
— Claus Ast (@skizzenblog) March 15, 2020
— h00t (@h00tcom) March 16, 2020
DAZEDでは、1882年ニューヨーク生まれのエドワード・ホッパー自身も激動の時代を生きたことが指摘されています。1910年代にはスペインかぜがパンデミックになっていますし、その次は電化製品が広まってニューヨークが世界金融の中心となった狂騒の20年代。しかし30年代には大恐慌、そして第二次世界大戦へ突入。遅咲きのホッパーが40代にして脚光を浴びたとき、それは「不確実性が際立つ世界でおだやかに孤立し不安を抱える人々」イメージがマッチする時代だったわけです。「答えはすべてキャンバスにある」と語っていたホッパー自身は「ロンリネス作家」然とした扱いが不満だったらしいのですが。ここらへんを掘ってみると、“Nighthawks”ふくむ多くの作品でミューズとなった妻ジョーが意識的に「世捨て人作家」像を構築させたことなど、興味深い情報が続々出てきました(ちなみに、ジョーはホッパーよりも先に成功した画家だったそう)。あと、すごい雑なフィーリングなんですが、アメリカを戯画化するような風景画を嫌っていた彼がピューリタニズムな共和党員だったことも腑に落ちる絵だなと。
今回の自主隔離旋風による再注目で興味深かったことは、20世紀前半に描かれた空間の絵が2020年でも通用することです。たとえばヘッダーに使用した1952年作“Morning Sun”。モデルとなった妻ジョーの功績を特集した2018年Stylist記事で現代化されているのですが、MacBookを加えた程度のアレンジで済んでいます(壁面にスケッチが足されていますが)。70年経ってデジタル化が進もうと、市民が行き交う建物のバイブスってそこまで変わってないのかもしれません。高層ビルや巨大商業施設と異なり、庶民が住む部屋の変化スピードはそこまで速くない現実に改めて気づかされるというか。なにはともあれ、アルフレッド・ヒッチコック『サイコ』からソーシャルメディアのミームまで、膨大なパロディを生みつづけるアートのパワーと普遍性を垣間見た気がします。
“Western Motel”では、たくさんのホッパーのトレードマークを見ることができます。匿名性、一過性の環境、隔離された姿。これらが示唆するのは、寂しさというより、孤独が生む性質でしょう (2018年, Artsy)
代表作から80年経った今でも、ホッパーがつむぐ静寂な空間と不安の交差は我々のもっとも脆弱な部分に触れるものです (2007年, Smithsonian Magazine)
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