トリミングって、何?
1. トリミングに関する話題
もともとの話題はプロ同士のSNSでのやり取りで「プロならトリミングしないよね」っていうところから始まった論争。いろいろ考えるのが好きな僕にとってちょっと興味がわきました。そこでこの話題、ちょっと掘り下げてみようと思います。
2.トリミングとは
この手の論争はまずは言葉の定義を確認するところからでしょうw
ここではGoogleで検索してみるとOxford Languagesからの定義を引っ張てきました。
写真で、焼付けまたは引伸しのときに、画面の不要な部分を除いて構図を整えること。
さて、ここでさらっと問題になる言葉が含まれているように思います。それが「構図」。ここでもこの言葉の定義をもう一度確認しておきましょう。
構図とは
絵画などで、各部分を適当に配置してまとまった全体を作り上げること。コンポジション。その、構成された図形。
ここまで読まれて何をいまさらって方はもう別のページに飛ばれているでしょうw。今回は割と早めに結論書くのでもう少しご辛抱ください。
3. トリミングはなぜ必要か?
これはSNSでもプロの方が書かれているように撮影した写真を公表する媒体に合わせるために成形しないといけないので必要です。まあ、ご自身の写真集でもレイアウトの都合上トリミングは必要ですね。エディターが配置を考えた際に(見開きとか)、どうしてもトリミングは避けられない、これは考えただけでも当然だし、プロの方はそれを前提で撮影されていると思います。
に、対して別のプロと思しき方の発言はプロなら「トリミングを前提とせず撮影するべきだ」という、まあ、精神論にちかいんですけどwこの書き込みがあったのでプチ炎上したみたいです。ふーむ。
4.トリミングの定義から考えてみる
というところで、言葉の定義に戻ってみると実はトリミングという言葉の概念が違うのにも関わらず一緒にしてしまうからこういうことがおこるのではないかと(そもそも論ですねw)。メディアにあわせて画像を調整することが元来のトリミング(まあ本なら裁断っていうのが近いかな)であるなら後者の意見はクロップして構図を変えることをトリミングと言っているようです。クロップ(切り抜きですね)とトリミングと連続しているのでなかなか区別がつきにくいですが、問題なのは両者とも(程度問題はあれ)構図を変えてしまう、ということです。
ちょっと調べてみたら英語ではこういう言葉があるそうな
Recompose
ですのでトリミングとリコンポーズを同じ土俵で考えるとプロの精神論として炎上してしまったというのが僕の感想です。
5.構図を変えることとはダメなことなのか?
5.1. Recomposeのデメリット
「トリミングを前提にするのはプロのすることではない」というプロはRecompseを前提とする撮影をするのは写真家としておかしいという意見ですね。要はポスプロ頼みで撮影は写真家としてなってない、ということが言いたかったのではないかと思います。さてまあ、精神論はさておき技術的になんでRecomposeは避けたほうがいいかという点ですが
1)デジタルの場合解像度が足りなくなる
2)レンズの歪曲や収差、MTFや周辺減光などの画面内の分布が不均一になりレンズ特性を忠実に表現しない
というところでしょうか?まだまだいろいろあるかと思いますが、思いついたのがこのあたりですのでw。ちなみに1)は現在の高画素機ではよほど大きな画像出ない限り(まあ2倍程度ならポスプロでも大丈夫でしょうw)、影響は少ないと思いますし2)に至ってはレンズの描写評価用の作品でない限り、大丈夫でしょう。
5.2 Recomposeのメリット
これは実はたくさんあって
1)広角レンズなら周辺の歪曲を避けられる
2)Recomposeをセカンドシュートと考えた場合、改めて構図を考えなせる。
3)フレームアウトで不要なものが消せるので画像への影響が少ないというところでしょうか
ちょっと1)の例で出してみますとトップの画像のオリジナルはこれです
人物を広角でとるときの技術的な常とう手段ですねwww。
5.3 構図VS シャッターチャンス
元来、構図とシャッターチャンスは対立するのもではないのですが、便宜上こういうタイトルにしてみました。特に動きものや、スナップなどの瞬間を狙う撮影、ポートレートなどでも絶妙の表情を狙う撮影はシャッターチャンスを優先しますし、「フレーム内にはいっている」ことが重要な被写体かと思います。そうなると構図を後回しでもまずは被写体をフレーム内に収め、ポスプロで構図を考える撮り方にあるかと。まあ、本当にうまい人はこれが同時にできるんでしょうけどね。ただ、いろいろ動いてもらって、3分割法の交点とかいわれたら僕はひえーってなりますwww
5.4 一眼 VS ライカ
現代のミラーレス一眼だとフォーカスポイントとばかっぱやのAFであればシャッターチャンスと構図を並行して収めることが成立するでしょうしまた、これを目指して開発されているように思います。ライカだとビゾフレックスですかねw。で、これはプロの世界でとって出しで納品するために必須でしょう。
ところでライカはどうかというと、速写性から考えるとRecompose前提で開発しているように思います。というのもM10-R以降の高画素化はデジタルズームを含むクロップの耐性をあげる目的でしょうし、さらにapo-sumicron 50mmや35㎜は周辺までがちがちのMTFで設計されています。これはライカの性質上、レンジファインダーを使う場合は中央のフォーカスポイントになってしまうのであとでクロップしても周辺での解像度が落ちないようにしているように思います。それであの値段なんでしょうねw。それほど速写性が必要でない場合はビゾフレックスで好きなところにフォーカスを合わせてとることもできますよ、というところでしょうか。
6.最後に残った道しるべ
とまあ、なぜか最後の章はまどか☆マギカみたいですが、じゃあ、Recomposeはプロはしないのかという精神論でまとめていきたいと思います。アマチュアでもそうですけどねw
アンリ・カルティエ=ブレッソンはあの有名なサンラザール駅で大胆なRecomposeをしています。この時は望遠レンズを持ち合わせていなかった、そうです。でも、ブレッソンはトリミングを嫌がった。
これってすごく矛盾していますよね?おそらくですが、ブレッソンはメディアに公表される自分の作品が不用意に切られるのは嫌だった。でも、サンラザール駅ではその瞬間が撮りたかったし、そのまま公表するのではなく、Recompseしてでも出したかった、ということですね。
結局のところ、これは写真家の作画意図に帰着するのではないかと思います。ブレッソンはサンラザール駅でおそらくRecomposeを作画意図としてもって撮影していますし、雑誌の公表でのトリミングは自身の作画意図と違うところで構図が改変されるのを嫌がった、と考えるとこの矛盾は解決できるかと思います。件のプロはトリミングを云々というプロは作画意図では構図も含めろということが教条的だなと思えます。プロだからアマチュアだからというところを超えて、さらに技術的なものを超えて、写真家が最後によりどころにするのはその作画意図であり、それがトリミングやRecomposeを超えて最後の道しるべになるのではないか、という提案をだしてこの文章の締めくくりたいと思います。