ポートレートの絞り開放の功罪
意見の提示があっても理由がはっきりしない「絞り開放で撮るな」
開放絞りで撮るメリット
なんとなくSNSで「(ポートレートで)絞り開放で撮るな」っていう風潮が出ていますが、まずは絞り開放で撮るメリットを列挙しておきます。ちなみに僕の立ち位置としてはレンズのボケ味には以前うるさいほうでいまでも好きですw
70年代のグラビアや女優さんの写真集なテイストで撮れる
一眼らしい描写になる
背景を大きく減算できる
レンズのセレクトとカメラの設定のみでコントロールできる
各カメラ会社の作例で大口径レンズの代表として正しいまたはあこがれの写真として広報されている
1. 70年代のグラビアや女優さんの写真集なテイストで撮れる
これはグラビア・写真集がまだ爆売れだった時代の作例が影響していますねw。特に水着やヌードなどでは背景をかなり整理し圧縮感満点で、近さと背景処理を同時にされていたと思います。代表的なのはサンニッパ(300mm F2.8)クラスのレンズで各社こぞって高品質レンズの代表となってました。
2.一眼らしい描写になる
さて、これは年寄り年長者に多い記憶なんですが、それが手軽に自分のカメラで撮れるようになったというのが大きいです。サンニッパ使わなくても85mm F1.4-F1.8のレンズや135mmのレンズなんかはそれに近い描写ができるので、「あー、自分のカメラが欲しい」または「自分のカメラでグラビアみたいに取りたい」ていう昔のあこがれが再発するわけですw。まあ、ここは各カメラ会社が狙っているところですね。
3. 背景を大きく減算できる
これは写真的に正しい考え方かと思います。ポートレートの大御所、野村誠一さんもおっしゃってますし。写真は視覚心理学的に文字よりも情報量が多く、一気に視覚を占領するため減算しないと散漫な写真になってしまいます。例えば、文字ですと視線の動きは左から右か上から下に向かって1次元的にたどりそのうえで認知しますが、写真は平面で方向性がなく視覚に入力されるので基本的に伝えたいことを減算しないと何が言いたいかわからなくなります。まあ、これを逆手に取ったのがニューカラー派の等価性なんですけどねw。
ですのでポートレートの場合は人物であり、そこで表現されているものが中心となるのでそれ以外の被写体はわき役にするために被写体にピントを合わせます。また、手前の目にピントを合わせるのは「目」を中心として表現し、目以外のパーツをわき役として減算することが可能になっています。「目は口ほどにものを言い」と目を中心にする、いいかえれば最も表現したいものにピントピークを持ってきてそれ以外を減算するというのが表現として有効だということです。
これって絵画を振り返るとじつは印象派ってこういうことやってるんですよね。ちなみに、凡人の目には基本的に背景はボケずにパンフォーカスとして認知されています。これは、視覚心理的に何かを注視するとき(例えば人物から背景に視線を移すとき)その注意しているものに人の目はフォーカスを合わせているので、記憶としての映像は概ねパンフォーカスなんです。もっと言えば各場所にフォーカスを合わせた映像を記憶の中で再構成しているんですよね。ですので背景のボケた写真は、写真表現らしい表現なんですよね。
4. レンズのセレクトとカメラの設定のみでコントロールできる
では、なぜこの減算法が広く使われるようになったのかというと、背景コントロールまたは強調したい部分のコントロールをピントで調整できる、すなわちレンズの選択(中望遠以上の長玉)と絞り開放でつくる浅い被写界深度とピント位置というカメラの設定でコントロールできてしまうという簡便さなんです。カメラ設定すれば、背景をそれほど意識しなくても人物撮影が可能になるというお手軽さですねw。僕自身も背景が選べないときにやるのでまあ好きですし、以前のαのAマウントでボケ三昧撮ってきましたwww。これは写真的な楽しさと「カメラを操作している」っていう楽しさを同時に満たすので、カメラ好きは割と夢中になる撮影法かと思います。
5. 各カメラ会社の作例で大口径レンズの代表として正しいまたはあこがれの写真として広報されている
ということでこのように撮影された写真がSNSを含むネットにあふれ、そのためカメラの仕様にもニーズが出てくる。それが瞳AFや高速AF、そして正確なAF精度です。またレンズもポートレート用として大口径レンズが需要が出てくるという写真家とカメラメーカーの蜜月が出来上がりますね。そこでそういう性能や描写がどうなるかというところでプロ写真家の作例が出てくる。それを参考にして購買意欲がさらにあがるというカスケードです。まあ、べつにこれった誰が損するわけでもないのでw、いいことだと思うんですけどねwww
開放絞りで撮るデメリット
ただ大きな問題があって、この撮影方法は機材がそろえば手軽にできるのでSNSで蔓延しやすいというデメリットがあります。まあ、「似たような撮り方」っていうやつですね。この撮影方法の不幸なところは写真として正しく減算できているため、なにが撮りたかったかが下手にwはっきりするため同じようような印象を持たれやすいというデメリットが存在します。いわゆる、映像が消費される(おなか、いっぱい)という現象ですね。このため現在この撮り方が批判されているように思います。
80-90年代の広角ポートレートを振り返る
実はその時期に広角ポートレートがはやった時期がありました。もちろん中望遠でボケによる強調に対してのアンチテーゼとして出てきた撮影です。ご存じのとおり広角はボケが得にくいのと被写界深度が深くなるのでそれを使って撮影されたポートレートです。海外だとジャンルーシーフなんかが有名ですね。多分いまの背景のボケた写真は批判的な内容は過去にすでに出ていた、その繰り返しといっても過言ではないかと思っています。
で
ボケを使わない背景は
というのは別の記事にしたいと思いますwww