「名誉と恍惚」松浦寿輝
こんな分厚い本、はたして読み通せるのかと思いつつ読み始めましたが、読了しました。
『日中戦争のさなか、上海の工部局に勤める日本人警官・芹沢は、陸軍参謀本部の嘉山と青幇(チンパン)の頭目・蕭炎彬(ショー・イーピン)との面会を仲介したことから、警察を追われることとなり、苦難に満ちた潜伏生活を余儀なくされる……。祖国に捨てられ、自らの名前を捨てた男に生き延びる術は残されているのか。千三百枚にも及ぶ著者渾身の傑作長編。』
新潮社のホームページからの引用です。
タイトルと内容がもうひとつ結びつかないな、と思ったんですが、最後に理解できます。このタイトルしかないな、という感じです。
上海マフィアのボスの第三夫人であり、本作のヒロインである美雨という女性が、元女優で、この時代の上海らしく阿片中毒の退廃的タイプなのですが、最近の役柄とあいまって、頭の中でぱるるとしか思えなくて困りました。
まあそういうのがあると読み進む助けにはなるのですが、どっか違うんではないかという思いもあり。
様々な謀略、裏切り、倒錯的愛情などが重なり、主人公がどんどんドロップアウトしていく(させられる)ので、気が重くなる感じもあるのですが、長い話だなと思うことはなかったです。
ちょっと今までの読書体験にない小説でした。
新潮社のホームページからリンクされている筒井康隆氏の書評、大絶賛なんですがストーリーが分かってしまうので、読むタイミングには注意が必要です。