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『Oe(おおえ) 60年代の青春』 司修
読書記録を再開します。
これは、大江健三郎の本の装丁を長年続けてきた著者が、2冊の本を中心に、モデルになった社会的事象についての思い、当時のことを書き綴った本。
在日朝鮮人の起こした殺人、連合赤軍事件、狭山事件など、大江がどれだけ時代に寄り添い、取り扱うことの難しい、重大な出来事にコミットメントを続けたかがあらためて分かる。
大江の本は初期の短編しか読んだことがない。長編はテーマが重く難解そうで、手に取ることも今までしたことがない。
ブルース・スプリングスティーンが好きな人がその源流たるボブ・ディランを聴くように、学生の頃好きだった中上健次や村上龍の文体の先駆者として読んだことがある程度。
それと、右翼からの圧力で活字化できない「右翼少年死す」を友人が図書館からコピーしてくれたりとか。今ではこのテキストはネットでアップされていて簡単に読むことができる。
山口二矢をモデルにした「セヴンティーン」の続編である「右翼少年死す」は、初期の村上龍そのまんまだなあと思った。
この本については、とにかく関連する事件の引用が重く、気持ち悪く、読むのが大変であった。昔連合赤軍事件に興味があって関連する本を読み漁ったが、その頃は自分はタフだったんだなと思った。
著者の戦前・終戦直後の体験の記述と、つげ義春の漫画の丸々の引用・説明が心に残った。