ある日の授業終わり、僕は高校の屋上に向かった。部活も引退して何もやる気が出ない。
屋上には、女子生徒が1人でいた。僕がドアを開けると、その子はこっちを向いて「こんにちは」と声をかけてきた。知らない子だったけど、「こんにちは」と返事をして、その子の近くに座った。屋上からは街を遠くまで一望できた。
「今日、世界が終わる日なんです。知ってました?」そう彼女は話し出す。ただ前を向いて話し出した。
「私の家の教典に書いてあるんです。世界が終わる日付が。それが今日なんです。だから、世界が終わる瞬間を見るために、ここにいるんです」
世界の終わりか。なんかそれも良い気がしてきた。今日で世界が終わっても、何も後悔なんてない。
「世界が終わる瞬間て、どうなるの?」と僕は質問する。
「とても美しいことが起こると、教典には書かれてました。何にも替えがたい、見たことないぐらい美しいことが起こるそうです」
「それはとても楽しみだ」
どんどん日が暮れてきて、夕焼けが濃くなってくる。オレンジ色の世界に少しずつ変わってくる。
太陽が山に差し掛かり、隠れようとした次の瞬間、奇跡が起こる。
オレンジ色に輝く気球が空から降ってきた。
一つや二つなんかじゃない。空を埋め尽くす数の気球が浮いている。気球は僕たちの目線にまで降りてくる。夕焼けに負けないぐらいのオレンジの光を僕たちに打ち込んでくる。僕たちは心を打たれる。ただ見惚れるしかできない。
太陽がすっぽり山に隠れる。夜の帳が降り始める。気球たちは地面の方に下がりながら消えてしまった。
「世界は…終わったの…?」
「はい、終わりました。」
そい言うと、彼女は小さな本を地面に放り投げた。きっと教典なのだろう。
彼女はそれにライターで火をつけた。
「新しい世界の始まりです」
燃える火を眺めながら、彼女は僕に宣言した。
新しい世界には、僕たち2人だけが立っていた。
【画像出典】
1. https://www.pinterest.jp/pin/504473595744606123/
2. https://publicdomainq.net/book-0003816/
3. https://www.uhdpaper.com/2021/02/82930-anime-girl-sky-lantern-sunset-art.html?m=1
4. https://www.pxfuel.com/ja/free-photo-ooaaj
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?