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乗法公式を使いこなそう③応用形の展開

基本形の乗法公式は、
$${(x+a)(x+b)=x^2+(a+b)x+ab}$$
$${ (x+a)^2=x^2+2ax+a^2}$$
$${ (x-a)^2=x^2-2ax+a^2}$$
$${ (x+a)(x-a)=x^2-a^2}$$
となります。
では展開の計算で、
$${ (-x+2)(x-3)}$$
$${ (-x+5)^2}$$
$${ (-x+6)(-x-6)}$$
の計算をできますか?
これらの計算の答えは、
$${ (-x+2)(x-3)=-x^2+5x-6}$$
$${ (-x+5)^2=x^2-10x+25}$$
$${ (-x+6)(-x-6)=x^2-36}$$
となります。
これらのような、$${ x}$$の符号にマイナスが含まれるような応用形の展開を、基本形の乗法公式を利用して計算することを考えてみましょう。
数学が苦手な場合は応用形の展開を、基本形の乗法公式を使わないで計算するかもしれません。
しかし、基本形の乗法公式を利用して、計算ができます。
これら応用形の展開を基本形の乗法公式を利用して計算ができるようになるため、どのように考えて計算をすればよいかについて書きます。

応用形の展開の計算方法

応用形の展開、

  1. $${ (-x+2)(x-3)}$$

  2. $${ (-x+5)^2}$$

  3. $${ (-x+6)(-x-6)}$$

の計算を考えてみましょう。
これらの応用形の展開は、1式と2,3式の2種類に分けることができます。
どのような理由で分けたかわかりますか?
この理由は、式の中の各括弧内で$${ x}$$が同符号になっているか異符号になっているかとなります。
つまり1式は、
$${ (-x+2)(x-3)}$$
より$${ x}$$の符号が、$${ (-x+2)}$$はマイナス、$${(x-3)}$$はプラスなので、異符号となっています。
2式は、
$${ (-x+5)^2}$$
より$${ x}$$の符号が、$${ (-x+5)}$$はマイナスのみなので、同符号となっています。
3式は、
$${(-x+6)(-x-6)}$$
より$${ x}$$の符号が、$${(-x+6)}$$はマイナス、$${(-x-6)}$$はマイナスなので、同符号となっています。
これらの異符号の場合同符号の場合の計算方法について解説します。

1式(異符号)の計算方法

$${ x}$$が異符号である1式、
$${ (-x+2)(x-3)}$$
の計算方法は、まず$${ x}$$の符号を全てプラスにすることを考えます
この式では、$${ x}$$の符号がマイナスになっている$${ (-x+2)}$$を$${ -1}$$でくくり、
$${-x+2=-(x-2)}$$
とします。
これにより、
$${ (-x+2)(x-3)=-(x-2)(x-3)}$$
となり、
$${ (x-2)(x-3)}$$
基本形の乗法公式を使って、
$${ (x-2)(x-3)=x^2-5x+6}$$
と計算し、
$${ -(x-2)(x-3)}$$
$${=-(x^2-5x+6)}$$
$${=-x^2+5x-6}$$
となります。
これらから、
$${ (-x+2)(x-3)=-x^2+5x-6}$$
となります。

2,3式(同符号)の計算方法

$${ x}$$が同符号である2,3式、
$${ (-x+5)^2,(-x+6)(-x-6)}$$
は、基本形の乗法公式の覚え方を少し変えるだけで、計算ができます。

まず2式、
$${ (-x+5)^2}$$
の計算方法について解説します。
基本形の乗法公式
$${ (x+a)^2=x^2+2ax+a^2}$$
見た目を少し変えて
$${ \{(+x)+(+a)\}^2}$$
$${=(+x)^2+2(+a)(+x)+(+a)^2}$$
とします。
つまり、$${ x \to +x,a \to +a}$$と省略する$${ +}$$をあえて書くようにします
このように、符号を含めて基本形の乗法公式と同じように計算すると考えます。
つまり、
$${ (-x+5)^2}$$
少し変形して、
$${ (-x+5)^2= \{(-x)+(+5)\}^2}$$
と考え、
$${ \{(+x)+(+a)\}^2}$$
$${=(+x)^2+2(+a)(+x)+(+a)^2}$$
同じように計算し、
$${ \{(-x)+(+5)\}^2}$$
$${=(-x)^2+2(+5)(-x)+(+5)^2}$$
$${=x^2-10x+25}$$
となるので、
$${ (-x+5)^2=x^2-10x+25}$$
と計算できます。
この考え方は、
$${ (-x-a)^2}$$
パターンでも使えます。
この場合は、
$${ (-x-a)^2}$$
$${ =\{(-x)+(-a)\}^2}$$
$${=(-x)^2+2(-a)(-x)+(-a)^2}$$
$${=x^2+2ax+a^2}$$
となります。

次に3式、
$${(-x+6)(-x-6)}$$
の計算方法について解説します。
この式が、

  • 式の中の各括弧内で、$${ x}$$が同符号になっていること

  • 定数項が$${ +6,-6}$$のように絶対値が同じで異符号になっていること

に注意しましょう。
3式は2式、
$${ (-x+5)^2}$$
同じ考え方で計算できます。
基本形の乗法公式
$${ (x+a)(x-a)=x^2-a^2}$$
で$${ x \to +x}$$として、見た目を少し変えて
$${ (x+a)(x-a)= \{(+x)+a\}\{(+x)-a\}}$$
とし、2式と同様に符号を含めて基本形の乗法公式と同じように計算し、
$${ \{(+x)+a\}\{(+x)-a\}}$$
$${=(+x)^2-a^2}$$
と考えます。
つまり3式は、
$${(-x+6)(-x-6)= \{(-x)+6\}\{(-x)-6\}}$$
少し変形し、
$${ \{(+x)+a\}\{(+x)-a\}}$$
$${=(+x)^2-a^2}$$
同じように計算し、
$${\{(-x)+6\}\{(-x)-6\}}$$
$${=(-x)^2-6^2}$$
$${=x^2-36}$$
となるので、
$${(-x+6)(-x-6)=x^2-36}$$
と計算できます。

まとめ

今回は応用形の展開

  1. $${ (-x+2)(x-3)}$$

  2. $${ (-x+5)^2}$$

  3. $${ (-x+6)(-x-6)}$$

の計算方法について書きました。
基本形の乗法公式と違う場合
$${(ax+b)(cx+d)=acx^2+adx+bcx+bd}$$
使うことだけを考えるかもしれません。
しかし少し変形すると、基本形の乗法公式を使える場合があります。
計算の速さ・正確さを考えると、できる限り基本形の乗法公式を利用する必要があります
特に今回の応用形の計算のうち、
$${ (-x+2)(x-3)=-(x-2)(x-3)}$$
$${ (-x+5)^2=(-x)^2+2(+5)(-x)+(+5)^2}$$
という計算方法は、慣れれば難しくはないと思うので、できるようになったほうが良いと思います。

また基本形の乗法公式、
$${ (x+a)^2= \{(+x)+(+a)\}^2}$$
と少し変形し、
$${ \{(+x)+(+a)\}^2}$$
$${=(+x)^2+2(+a)(+x)+(+a)^2}$$
とする考え方は、
$${ (x+a)^2, (x-a)^2, (-x+a)^2, (-x-a)^2}$$
全てのパターンで使えます。
このため、この計算方法のみを使っても良いと思います。
しかし、計算の速さ・正確さを考えると、
$${ (x+a)^2, (x-a)^2}$$
は、基本形の乗法公式を使った方が良いと思います。
この理由は、最初に基本形の乗法公式を習うからです。
まずは、
$${ (x+a)^2, (x-a)^2}$$
基本形の乗法公式で速く・正確に計算をできるようになった後
$${ (-x+a)^2, (-x-a)^2}$$
のような応用形の展開の計算練習をすると良いでしょう。
最終的には、より速く・正確に計算できる方法を選び、使えるようになりましょう。

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