見出し画像

決済論議ですっぽり抜けていること

7月号なので少し遅くなったのだが、決済を特集した業界誌を読んだ。

ざっと読んで気づいたのは、消費者視点の欠落である。

特徴的な文言を抜粋する。
『「中小事業者のキャッシュレス導入に関する課題」調査で、キャッシュレス決済を導入したところ(35%)に、なぜ導入したのか、その理由を聞いた。大きくは2つのセグメントに分類できる。売上アップと業務効率アップである。』

買い物という行為は、店に行き、店内を歩き、商品を選別し、カゴに商品を入れて、レジに並び、決済し、帰る、という作業の集合体である。
実はネット販売とはこの中の「商品を選別し」以外の作業を売り手が負担するものだ。これによって、買い物という面倒な作業のほとんどから解放されることになり、とても便利だから使おう、ということになるのである。

この7つの買い物作業のうち最も面倒なものはどれだろう。
レジに並び、決済する、の2つなのである。
商品の選別中は集中しているのでそれほど苦痛に感じないものである。しかしそれが終わったら、次は帰ることに気持ちの重心が移るので、レジに並び、決済する、という作業はある意味余計なものとなる。
レジで並んでイライラした経験はみんな持っていることだろう。

私がこの「苦痛がなくなった」を実感して驚いた最初のケースはウーバーである。
次がアマゾンゴー。とくにアマゾンゴーは鳥肌が立つような感動を覚えて、これはいつか必ず普及するだろうと確信したものである。

実はいま生じている決済革命とは、買い手を主軸に据えた「決済という買い物中の最大の苦痛を取り除くことにある」、が真理なのである。
そして売り手目線の「売上アップと業務効率アップ」はそこから派生する副次的なものだと考えるべきである。

業界誌を読んで、この見方がまったくないということに気づいたのだが、しかしながら日本の小売業界の、とくに社長や幹部といった経営層で、決済革命はお客のためだ、と言っている人は私の知る限りはいないので、業界誌にそういう視点が欠落しているのはしょうがないとも言える。

いま小売業界にデジタル化が必要なのは、デジタル技術が急速に進化していて、その進化をお客の買い物をさらに便利にしたり、効率化で売価を下げたり、などなど、お客にメリットがある何かに生かすことが容易になっているからである。
売上アップ、人手不足、人減らし、はそこから派生する副次的なものと考えるべきなのだ。

デジタルは、お客ファースト、売り手はセカンド、なのである。

お客にとって最も便利な仕組みが存続していく、と考えたときに、実は私はコード決済に将来性をまったく感じない。アップルペイやSuicaといった非接触型ICカード決済と比べたときに、アプリを開いてコードを表示して・・・とコード決済はやることが多すぎるのだ。
便利じゃないのである。

最終形はスキャンも決済もすべてなくしてしまうアマゾンゴー型なのだが道のりはまだまだ長く、それまでの中継ぎとして非接触型ICカード決済があり、コード決済はあくまでも傍流で主流にはなり得ない、と私は思っている。
だから、日本のように雨後の竹の子のようにコード決済が増え、巨額投資をする意味が、私にはどうにも理解できないのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?