鈴木敏仁

アメリカ在住の流通コンサルタント、ジャーナリスト。在米期間は30年を超えました。

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最近の記事

JWOで新たなアマゾン経済圏の構築へ

アマゾンゴーで実装されているスキャンなし/レジなしのJWO(Just Walk Out)テクノロジーをアマゾンが市販することが分かったのが一昨日のことだが、利用する企業がすでに現れた。 空港内で店舗を展開しているOTG社で、1店舗目はニューアーク空港内のCIBO Expressでオープンは3/16となっている。 OTG社とは昨年9月の時点で協議しているという情報が流れていて、その他には映画館や、野球スタジアム内のコンセと話し合っているという情報も出ていたので、これから導入す

    • ウォルマートIRLの本当の凄み

      ウォルマートがインテリジェント・リテール・ラボ(IRL)と呼ぶデジタル実験店舗を、NY郊外のロングアイランドにオープンしたのは昨年5月のことである。 トップ写真のように使っているのは小型(といっても約1000坪)コンビネーションストアのネイバーフッドマーケット。この店舗を選んだ理由はどうやら来店客数の多い繁盛店だからのようだ。 この実験店、目的は2つあると思っている。 1つめは、何をやろうとしているのかをお客に認知してもらうこと。下の写真のように頭上に大量のカメラがぶら

      • ホールフーズが店内フルフィルメントスペースをアマゾン化

        アマゾンがこういうことをやっているホールフーズを見つけました。 入り口から入ってすぐ左側にこういうスペースを発見。 これはレジ側から見たところ。 長方形です。 ドアの向こう側に見えるのは宅配用のパッケージでしょう。 どうやらインストアピックアップのようなのです。 いままでホールフーズはプライムナウを使ってのホールフーズ商品の短時間宅配はやってきたのですが、ピクアップハブ機能はロッカーのみで、写真のような専門スペースを設けてさばくということはやっていません。 それと一番

        • セブンペイ問題の本質

          もう一つ決済ネタを。 セブンペイが大失態を起こしたことについてはもはやここで書くまでもないことなのだが、実は日本のメディアが書いていることについて少々の違和感を持っていた。 ちょうど同じ時期に、キャピタルワンというアメリカの金融大手が1億人強のデータを漏洩させたことがニュースになった。 過去最大規模と言われていて、その規模はセブンの比ではない。 アメリカの小売業界では過去、ターゲット、ホームデポ、TJマックス、とハックされた企業は少なくなくて、どれもセブンよりもそうとう

          決済論議ですっぽり抜けていること

          7月号なので少し遅くなったのだが、決済を特集した業界誌を読んだ。 ざっと読んで気づいたのは、消費者視点の欠落である。 特徴的な文言を抜粋する。 『「中小事業者のキャッシュレス導入に関する課題」調査で、キャッシュレス決済を導入したところ(35%)に、なぜ導入したのか、その理由を聞いた。大きくは2つのセグメントに分類できる。売上アップと業務効率アップである。』 買い物という行為は、店に行き、店内を歩き、商品を選別し、カゴに商品を入れて、レジに並び、決済し、帰る、という作業の

          決済論議ですっぽり抜けていること

          インディ書店は本当にデジタル時代の負け組なのか?

          アマゾンやEコマースの台頭やデジタル化の話を書くときに、負けてしまったレガシーな存在の象徴としてインディペンデントの中小書店を引き合いに出す人が多い。 とくに有名なコンサルタントやアカデミックな先生とか、そういう類いの人に、そういうことを書く人が多いように思っている。 ところが。 日本は分からないが、少なくともアメリカのインディ書店は増えているのが事実なである。 米国書店協会(American Booksellers Association)の資料によると、インディ書店数

          インディ書店は本当にデジタル時代の負け組なのか?

          セルフレジは実は不便だ、という話

          セルフレジを使っていていつも考えるのは、セルフと対面を比較したときに、要する時間はあまり変わらないんだろうなということである。 プロがスキャンし決済する方が早いのは当たり前なのだ。 列に並ぶのが嫌なのでどうしてもセルフを選んでしまうのだが、並んだとしても対面レジの方が早いんじゃないかと思うことはしょっちゅうある。 本日のセルフレジでの体験。 スキャニングがすべて終わり、さて清算しようとしたら、突然「係員が来るまでお待ちください」という画面となってしまい、ところが周囲に偶然

          セルフレジは実は不便だ、という話

          人的サービスを強調するアメリカの小売業界

          スーパーマーケットチェーンのハリスティーターが既存店を改装してフルレジを取っ払ってすべてセルフレジにする計画を発表している。 500坪程度の小型店舗で、商圏特性でまとめ買いが少ないことが理由。 私が注目しているのは、人は減らさないとしていること。 空いた時間を顧客サービスに充てると説明しているのである。 日本のセルフレジがすべて省人化を目的としているのと対照的だ。 アメリカは人手不足じゃないからできるのだろうというのは間違いで、こちらは景気が良くて失業率が低いから人を集

          人的サービスを強調するアメリカの小売業界

          ”働きがいのある会社ランキング”と、働きたくならない日本の小売業界

          ちょうど手元にフォーチュン社による今年の「100 Best Companies to Work for」(働きがいのある会社) があるので共有したい。 トップ5社以下は小売企業のみを抜き出してみた。 1:ヒルトン 2:セールスフォース 3:ウェッグマンズ 4:ワークデイ 5:キンプトンホテルズ 12:パブリックス 46:REI 85:シーツ ウェッグマンズ、パブリックス、REI、シーツ、と今年は4社が100位以内に入賞。そしていつものことだがとくにウェッグマンズとパブリッ

          ”働きがいのある会社ランキング”と、働きたくならない日本の小売業界

          アマゾンゴーという店舗と技術の話

          昨年の1月にアマゾンゴーがオープンし、その直後にメルマガに書いた文章をここに載せておきます。 分かっていない人、勘違いしている人がほとんどなので。 オープン直後なので、この時点ではまだ私は実物を見ていません。でも今読んでみて、内容はほぼ本質を突いていると思います。 オープン直後に1つめを書き、その後3ヶ月ほどしてから開発責任者が業界カンファレンスでコメントしていたので、それを土台としてもう一回考察して書いています。 メルマガは有料なので、こちらも有料とします。 本当のこと

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          ”無人化”という表現がピント外れな理由

          アマゾンゴーがオープンして以来、「無人店舗」という言葉が日本のメディアに氾濫している。 たぶん彼らは店舗に携わったことがないのだろう。補充したり、掃除したり、クレームに対応したりと、店舗には必ず人は必要である。商品補充するロボットでもいない限り、店舗を無人で運営することは今の時点では不可能である。 ウォルマートが無人化を志向している、という趣旨の記事を最近読んだ。そもそもウォルマートは無人化なんて一言も言っていないのだが、この記事の骨子は”レジの無人化”を言いたいのであった

          ”無人化”という表現がピント外れな理由

          次のトレンドはクリーンビューティか

          ちょっと前までは、ビューティ業界の次のテーマは”ファストビューティ”かと思っていたんだが、表だって取り上げられる前に普通のことになってしまったようで、どうやら次は”クリーンビューティ”となりそうだ。 要はオーガニックやナチュラルの延長線。ビューティの場合はケミカルをどう扱うかという話となる。 ちなみにファストビューティとして扱われるのが、NYXであり、e.l.f.である。両社ともにマスリテーラーの定番棚にはめ込まれるに至っている。

          次のトレンドはクリーンビューティか

          ウォルマート好業績の背景にあるもの

          ウォルマートが好決算で、デジタル戦略の好調を指摘するメディアが多いけど、忘れてならないのは、店員の待遇改善や働きやすい職場作りといったベーシックなことから取り組み始めたことである。 デジタルであろうとなんであろうと、何をしたとしても、ブラックな職場では業績をコンスタントに上げることはできない。

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          AWSを使う日本の小売業界の不思議

          アマゾンは既存のリアルリテーラーよりも後発で、しかもEコマースだけにディスアドバンテージが一杯ある。 そんな状況で、儲けを度外視し、クリティカルマスを取るために先行投資を優先して来られたのは、データをマネタイズできているからである。 最も分かりやすいのはAWSだ。 つまりAWSをクラウドプロバイダーとして使うことはアマゾンが赤字でECを運営することを助けていることになる。 だからアメリカの小売企業はAWSを避けてアジュールを使っている。 ところが日本の小売業界にはAWS

          AWSを使う日本の小売業界の不思議

          リテールデータのマネタイズ

          AdAgeの記事にこういうくだりがあった。 「アマゾンはウェブサイト検索の16%をマネタイズしているが、ウォルマートは1%に過ぎない」 たぶんサイト上の検索に対して表示される広告のことを言っているのだろう。 小売業界にこれから必要なことは、企業活動の中からデータを見つけ出して、それをマネタイズする手法を見つけることである。 それが薄利なビジネスの一助となる。 アマゾンが赤字でもECを運営できるのはデータをマネタイズしているからで、フェースブックが無料であの機能を提供でき

          リテールデータのマネタイズ

          アマゾンがホールフーズを買収した理由

          ここで公開する記事はメルマガに書いた3本分を一つにまとめたものです。 メルマガを購読していない方で、本当のことを知っておきたいと言う人はお読み頂いて損はないでしょう。 メルマガは年間購読制の有料なので、1本当たりで換算し、若干古いネタなので半額にして、800円としています。 (6830文字)

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