インディ書店は本当にデジタル時代の負け組なのか?
アマゾンやEコマースの台頭やデジタル化の話を書くときに、負けてしまったレガシーな存在の象徴としてインディペンデントの中小書店を引き合いに出す人が多い。
とくに有名なコンサルタントやアカデミックな先生とか、そういう類いの人に、そういうことを書く人が多いように思っている。
ところが。
日本は分からないが、少なくともアメリカのインディ書店は増えているのが事実なである。
米国書店協会(American Booksellers Association)の資料によると、インディ書店数の推移は以下の通りだ。
2009年:1651店舗
2010年:1410店舗
2011年:1512店舗
2012年:1567店舗
2013年:1632店舗
2014年:1664店舗
2015年:1712店舗
2016年:1799店舗
2017年:1874店舗
2018年:1973店舗
以上はWiki上のデータをベースとし、2017年と2018年が欠けているのでABAがリリースしている年間出店数を単純にプラスして店舗数を算出したものだが、とある記事でABAは現在の店舗数は2470店舗と言及しているので、2017年と2018年は正確ではないかもしれない。
いずれにしても店舗数は確実に増えているのである。
アマゾンが創業したのは1994年で、この翌年から2000年までの5年間でアメリカのインディ書店が43%減ったという資料がある。
上記の資料を見る限り、反転したのは2010年である。
10年以上をかけてアメリカのインディ書店はアマゾンに対抗する術を見つけ出したのだ。
実はすでにこの現象についてはアカデミックな調査分析がなされていて、理由としてざっと3つが指摘されている。
1つめは周辺住民との密なコミュニケーションによるローカライゼーション。
2つめはオーナーの豊富な知識によるユニークなキュレーション。
3つめはイベント等による人が集まる場所作り。
ちなみにアマゾンブックスの1号店は2015年のオープンで、おそらくインディ書店が増えているというデータを元にして開発したのだろうというのが私の見立てである。
アマゾンブックスについても表面的な説明をしている人が本当に多いが、真実はここにあると私は思っている。
アマゾンなりのやり方で上記の1~3をやろうとしているのだが、ただ例えば書店のオーナーの語りに惹かれてしまうというようなパーソナルタッチの再現が難しく、繁盛するに至っていない、が現状といったところだろう。
ということで、デジタル時代の負け組みの象徴としてインディ書店を引き合いに出している人がいたら、ああこの人の頭は2010年あたりで止まってしまっているのだなと理解すると良いだろう。
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