珈琲屋は儲からない?
珈琲屋が儲かる、という話を聞いたことがありません。
中でもネルドリップのお店は失笑されるレベルだと思います。
どういうことか。
まだ経営的な部分はわかりませんが、イメージは大切なことだと思いますので、ちょっとネガティブな部分を抽出してみます。
ここが儲からない?
①ネルドリップの抽出には時間がかかること(=テイクアウトのしづらさ)
私の勤めていたお店は、どちらも一杯の抽出に4分前後の時間を要します。
抽出に時間がかかればお客さんへの提供も遅くなり、回転率も低くなります。ペーパーは一杯1〜2分程度がほとんどです。
また抽出時間が長いとテイクアウトをやりづらい。テイクアウトができれば席数を気にすることなくいくらでも提供することができるので、回転率無限ですね。
②長居したくなる店舗であること
ネルドリップは落ち着いた雰囲気の店舗が多いと思います。そのためゆっくりと時間を過ごすことも醍醐味のひとつです。
しかしその一方で経営的に考えると、やはりこれも回転率が悪くなる一因となります。
また、普通は「(品物の)提供までの待機時間」より「提供からの滞在時間」の方が長いですが、待機時間が長くても滞在時間にはカウントされにくく、心理的には待機時間に比例して滞在時間も長くなる傾向にあると思います。
ネルドリップは提供まで5分かかるとしたら、4杯分の異なる注文が入ればそれだけで最後の方は珈琲一杯で20分待ちです。
③客数(客層)、メニュー数(バリエーション)を絞ってしまうこと
ネルドリップのお店は小規模、少人数の個人店であることが多いと思います。
抽出時間もさることながら、人数が少なければそれだけ提供に時間がかかるので、食事メニューなど手間のかかるものは導入しづらい。となると食事需要のお客さんは見込めず客単価が下がり、メニューのバリエーションが少なければその分客層は絞られていきます。
逆に店舗面積を広めにとって、人をそれなりに雇う投資のできる資金力があれば解決するのかもしれませんが、そういうお店はまだあまり見かけません。
ただ、イメージですが、食事の提供と人を雇うことが選択肢にあっても、やりたがらない店主が多いかもしれません。
こだわりというか、なんというか。自分もやりたいとは思いませんので。笑
④深めの焙煎豆は価値が下がること
例えば、500gの生豆を深煎りで焙煎すると、水分等が抜けて380g程度になります。
しかし同じ500gの生豆を浅煎りに焙煎すると、410g程度になります。
つまり焙煎をすると、なぜか「深煎り豆は浅煎り豆より資産的な価値(≒価格)が低い」という状態になります。
これは深煎り好きとしては悲しいけれども変えがたい事実です。
かといって、同銘柄同量で浅煎りよりも深煎りを高価格に設定して「深煎りなのでこれでようやく同じ価値なんです」なんていうのも変な話ですよね。
⑤ネルフィルターにコストがかかること
ペーパーであれば安価で購入できて使い捨てなのでコストがかかりません。
ネルフィルターはおそらく量産できるものではありません。
機械的に作れるものなのかもしれませんが、私はまだそういうものに出合えていません。
HarioやKalita等のメーカー品もありますが、ネルの生地が全然違います。私の知る限りメーカー品の方がとても薄く、形に自由度がありません。
薄いことが粗悪であるというわけでは決してありませんが、ネル独特の旨味はあの生地の厚さに依るところも大きく、抽出方法によって求める形に違いが出てきます。
逆にメーカーがそういう生地を使って量産してくれたり形のバリエーションを増やしてくれると楽なんですが。私はネル縫いが苦手なので。笑
⑥薄利多売の商い
「コーヒー」は、薄利多売の商いといわれています。
ただどれだけの利益率なら普通程度なのかわかりませんし、もしかしたら世の中の小売業の多くがそういう商いなのかもしれませんね。
出版業界だけみても、版元(メーカー)、取次(卸)、書店(小売)の中では書店が最も利益率が低いですから。
なんだかタラタラと愚痴を垂れ流しただけのようになってしまいました。
しかしまずは知らなければ何も始まりません。対策も改善もできません。
理想的な循環
お金の話はなんとなくInstagramではしづらいですね。
「見え方」が重要なSNSですから、なんか悪い話のように感じてしまいます。
しかしお金はただの対価で、つまり「お仕事ありがとう」を見える形にしたもので、お客さんのためになる価値を作ることに苦心するのは人としても商いとしても至極真っ当なはずです。
それに、適切な利益を得なければお店を続けられなくなります。これはもちろん店舗経営者が一番困るのはいうまでもありませんが、一方で御贔屓にしてくださるお客さんにも大変残念な思いをさせてしまうものです。
適切な利益を頂いて、それをまたサービスに還元することが一番良いサイクルで理想なんですよね。
一方で真っ当なものを作っているのに「お金儲けができない(=利益になっていない)」というのは、「価値を伝えるべき人に伝えられていない(マーケティングの問題)」か「価値が伝わる人が絶対的に少ない(モノの問題)」か「利益計算が非現実的(経営の問題)」あたりに集束する気がします。
これらのどの問題で、どういう風に変えていけば良い方向に舵を切れるのか、でしょうか。
などと知ったように素人が申し上げました。
口だけならなんとでも言えますので、とりあえず理想を確認してみました。
答えのある記事ではなくて申し訳ありません。
これからずーっと考えていくぞ、という意気込みの記事です。