【さよなら大好きな人〜Episode 2〜】
21歳の時、ベトナムで日本語教師として派遣された私は、
全く日本語の出来ない、のび太のようなベトナム人に出逢った。
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そんな、少し切ない夜を越え、
マイチャウを後にした。
その合宿の後、彼とは一度グループで遊んだ。
その時も、のび太は恋人から電話があって、
すごく優しい笑顔を浮かべていた。
日本へ帰国してからも、
時々、彼からのたどたどしい英語でメールが入るたび、心が躍る自分がいた。
そんな彼と、翌年の日本語教師ベトナム派遣でも再会した。
ベトナムでは、友達が私に携帯電話を持たせてくれた。
なぜか私は海外に行くといつも誰かしら携帯を持たせてくれる(笑)。
電話番号がわからなかったけど、
ベトナムのコミュニティーはすごい。
気付いたら、彼からの電話が鳴っていた。
全然話せなかった英語は、ほんの少し上達していて、一生懸命待ち合わせ場所を伝えてくれた。
嬉しかった。
前回は数回しか会っていない、
言葉もほとんど伝わらない、
帰国後1年間はメールは10数件した程度。
なのに、彼のバイクの後部座席はとびきり落ち着いた。
湖のほとりのカフェでのんびり話し、デザートを食べた。
フランス語と、ベトナム語を少し教わった。
お互いの話をして、
恋人ともずいぶん前に別れたこともその時分かった。
そして、
「来週、僕のお姉さんの家に遊びにいこう!彼女は空港で働いてて、英語も上手だし、君の話をしたらすごく会いたがってたよ^^」
もちのろんで、私はポジティブな返事をした。
そして、寮の前まで送ってくれて、
私はいつも通り友達が去るのを見送る態勢。
しかし彼は、
彼だけは
“Lady first. After u go, I will leave." (レディーファーストだ、君が部屋に入ってから僕は帰るよ。)
彼の男らしい姿を垣間見て「またね」と手を振った。
何よりも嬉しかったのが、
「またね」
と言えることだった。
次の週、彼の姉夫婦の家に遊びに行った。
閑静な住宅街にそびえる家の玄関をくぐれば、
「こんばんわ~!」
ととびっきりの笑顔のお姉さんが迎えてくれた。
「何で日本語喋れるん?」と聞くと、
"I learned Japanese for you, but the word is only I know^^"
(あなたのために日本語勉強したの。「こんばんわ」しか覚えれなかったけど^^)
と、茶目っ気たっぷりに話してくれた。その歓迎が何より嬉しかった。
お姉さんとたくさん話し、
旦那さんや旦那さんのご両親もベトナム語しか話せない中でも
ニコニコ私の話を聞いてくれていた。
そこには、私よりも年の若いお手伝いの女の子がいて、
日本文化とのギャップを感じた。
後々聞くところによると、名目上は彼女はお手伝いさんだったが、
その分、大学などの学費もお姉さん家族が支援しているらしい。
すごいなぁ、素敵だなぁ。
そのお手伝いの女の子のお手伝いをしようとお皿を下げてたら、
おじいちゃんたちがなにか話している。
彼に、「おじぃちゃんたちなんて?」と聞くと、
「気が効く女の子だね、すごく明るいし、楽しいから、ぜひうちに嫁にきてほしいなぁ」
と話してくれていたんだとか。
言葉が通じないのにそんな風に思ってくれた
おじぃちゃんとおばぁちゃんの気持ちがすごくジーンときた。
食事の後、
私は持参した浴衣をお姉さんに着付けして異文化交流をした。
お姉さんはすっごく喜んでくれて、
代わりに、お姉さんのアオザイ(ベトナムの民族衣装)を着せてくれた。
着替えを終えて、部屋からでると、
彼と、家族みんながスタンディングオベーション!
たらふく遊んで、バイクにまたがりお姉さん一家に手を振った。
「今日は、ほんとうに来てくれてありがとう。 家族みんな、君が大好きだって^^」
彼は、すごく嬉しそう話してくれた。
バイクの2人乗りが大好きだ。
ハノイの空は快晴!という日はないけど、
少しの小雨はよりロマンチックにさえ感じた。
小雨をロマンチックに感じるなんて、私は完全に恋に落ちていたんだろう。
彼は、バイクに乗る時いつも歌を歌う。
ラララと歌い、ガハハと笑えば、いつも分かり合えた気がしてた。
彼の声は、
とてもずるい。
マヌケな見た目からは想像できない素敵な歌声。
それを後ろで耳を澄ませて聴いているあの時間が
すごく幸せだったんだ。
あと2週間。
1週間に1度のペースでしか会えない彼とは、多分会うのはあと2回。
来週は、彼の妹のように可愛がっている女の子に会いにいく。
自分の世界をシェアしてくれる事で、
彼の存在が日に日に特別になっていった。
その反面、
怖かった。
あの頃の私には、
誰かを好きになるのが、
すごくこわかったんだ。
To be continued...
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