前々世の記憶
前世の記憶を蘇らせてみた。
前世か前々世かはわからない。
ただ見えた、風景。
砂浜にいた。
私は「ゆう」のつく、男の子だった。
ゆうたろうだかゆうじろうだかそんな名前だ。
私の前には頭頂部で髪をひとまとめにした、男の人がいた。兄だ。
兄は私の今飼っている猫だ。
兄としばらく砂浜を散歩した。裸足で波が足に当たるのを感じながら。
そのうち歩くのに疲れた私は兄におんぶをしてもらった。
私は5歳くらいだろうか。
兄は15歳から18歳くらいだと思う、今の高校生くらいの歳だった。
おんぶをされていた後ろ姿と、そのあとに私を抱きしめる兄が見えた。
その砂浜には長い流木に4人くらいの7歳から10歳くらいの男の子たちが腰掛け、おにぎりを楽しそうに食べていた。
場面は変わる。
私は先生のところにいた。
先生は私の面倒を見、色々教えてくれていた人だ。
その人はこの世界にも存在している。実際に会ったことはないけれど顔は見たことがある。
その先生はいつも静かで物をよく書いていた。
私が9歳くらいになった時、街で火事が起こった。
真っ赤に染まる街、私はぼーっとしていた。
そしてまた場面は変わる。
私の最期の場面だ。
私は9歳でこの世を去った。
兄とかつて歩いた砂浜で、孤独に耐えられずに水死を望んだ。
ゆっくり泣きながら水に入って行った。
私は泣いていた。どうやっても孤独だったからだ。兄を失ったからかもしれない。先生もどうなったかわからない。
水の中に吸い込まれるように足を一歩一歩進めて行った。
水面が頭を越す。
そこまでで私の記憶は終わった。
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