ドブ臭い

下水の匂いが足元から匂ってくる。
生ぬるい風とともに。
そこに立ち続ける人はいないだろう。

先刻、糞を見た。
戸愚呂を巻いた芸術的な糞だった。
大きな犬がしたものだろう。

にんじん色をした何かや、飛び交い狂い貪る蠅を見ることができた。
誰かが踏んだのだろうか。靴底の型が残った一片が他の場所にも付着していた。

人間は飯を食って糞をする生き物だ。
一休という昔の偉い坊さまは、飯を食って糞をしたら人生なんぞすぐに終わるというようなことを言っていた。

私は旅人である。
一つの場所に居ることを好まない。
美しいものは移っていくからで、美しいものを追っている間は汚いものを見なくてよろしいからである。

また肉食獣でもある。
獲物がいなくなったら場所を移るのである。
肉食獣は自分より弱い生き物を狩り、それがいなくなれば自分を生かすことのできない
実はとても外界に依存的な生き物なのである。
微生物や菌などが生き物の中では1番強いだろうと思う。
自ら栄養となるものを生み出し繁殖していくのだ。

ここで繁殖についても考えてみる。
繁殖するのはそんなに称えられることだろうか。
いや、それはあまりに人間的でない。
人間的な思考をしたいとは微塵も思わないが、
生物的な思考をしたいとはもっと思わない。

臭いものには蓋をせよ。
醜いものは駆逐せよ。
心の汚いものには、

漂白剤をかけよ。

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