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『幽霊船はうつらない』全曲歌詞


Upstairs

夜光虫 作業中 飛ぶように まばたいて空仰ぐ
僻地のホテルの錆びた色したロマンス すごいな
うずく 丸 ブラックホール 昇る蒸気 磨りガラス

泳ぐ世帯 居間に立って廊下眺め 煙るスパイダー
柔いスロウになって オーバーライトした螺旋階段

栓をはずしたままの湯船に
お湯を沸かす連鎖じゃん

もう淡い煩悩はらって抜け出し空仰げば
柔いスロウになって オーバーライトした ただなか
暮らし 天国旅行 まだファストパス使えないな
夜半くらい部屋に 窓開け放ち 眩ますスパイダー


蓄光

目の前で焚かれた赤いフラッシュの残像が
まだここに残っている じりじり傷んでいる
月光に似た優しさ 頬を撫でる讃美歌
覆い隠す煙たさ 無防備なまま

闇で光っている きれいなものではないけど
少しだけあたためておきたいな

目眩がしたなら 空高く伸びるアンテナ
重ならない周波 風船が割れるような
幼さが泣きじゃくっている静けさのなか

目覚めたての煽情な指先までの仕草が
否応なしに誘う ここにいていいんだと
暗いもやに刺さった強いフラッシュみたいだった
都合良くうつくしく残るのはなぜ

陽向で翳っている 空が低くうなっている
知らないを知ったときの赤い瞬きが

目眩がしたなら 空高く伸びるアンテナ
重ならない周波 風船が割れるような
幼さが泣きじゃくっている静けさのなか
君から 焚かれた


高速ラジオ

高速ラジオから流れて流れて流れて
耳をつん裂きそうな報せが流れて流れて
暇つぶせそうな素敵なものなんて買えないし
お腹もすいてくる
くだらない笑い話も鮮度がすぐ落ちる

慟哭 迷子カラス ただ酔って漂って漂って
ファストフードの様な言葉に逃げないでいたいぜ
つたない合槌を打って
君のやわいところに両手を振ってみる
笑顔の裏っかわにあるさびしさ突き止める

高速ラジオは澄まし顔して
「無機質なほんとばかりだ」って
窓が曇るような吐息で溶いた
うそのほうがいいんだ
このまま夜中の背をなぞって
抜け駆けするほど速くなって
電波が目もくれない
かすかな温度で約束したいだけだ

いつだって心根はやわいぜやわいぜやわいぜ
揺さぶられればほら 雪崩れて流れて流れて

高速ラジオは澄まし顔して
「無機質なほんとばかりだ」って
窓が曇るような吐息で溶いた
うそのほうがいいんだ
このまま夜中の背をなぞって
夢の途中みたいな灯り浴びて
放ってしまいそうな世界抱いて
抜け駆けたいだけだ


替わり目

別れた季節はぬるい
焦がれた季節はぬるい
体温が

月の裏側は遠い
君の裏窓が遠い
台本は快曇だ

余熱を持ったサンタンと冷えた頭は
溶けるようなせめぎあった硝子杯の中
頬が煌々と染まった朝

だんだんと褪せた恋の粒は
アテもなくただ彷徨った
閑散と果てた掌の中
次ははて何を注ごうか
何故か胸がさわぐ

別れた季節は


jetlag

到着ロビーの風にさらされ
知らない匂いに包まれている
昨日から頭が重いって思うのは
気圧のせいじゃないって知っている

涙は瞼に溶かして還しそう
空さえ泣いているのに

ずいぶんと遠くまで
飛んできちゃったみたいだ
ここは流れが速くて すぐ休めなくて
あまい夢の残り火を 水攻めしないで
知らない街角に迷子センターはない

未来の話ですぐ埋まるノートに
いまの姿を書けたら

真っ直ぐな眼をしているからって
かなしまないで
流れている時間が少しちがうだけ
あまい夢の残り火を 水攻めしないで
非常扉探して彷徨っているキューライン


深夜散歩 (Album ver.)

今日の最後の頁がめくれた
横たわる身体重くなったまま
両手をひろげて 部屋の中ふさいだまま

何処へでもいけそうな気になるのは
何処へもいけないような僕だから
身体をおこして 窓開け放ったまま

壁掛けの絵画揺れたら風吹いた報せ届くから
このままどうにか大きなまどろみ抱いたまま

夜に鳴いたら羽根が生えていた
ひろい空はやけに淡い色をしていた
月明かりも空にない夜は
燃える街灯がやさしさを焚いていいた
落ちては上がってを繰り返しながら
祈りをささげてぶらぶら

やがて見馴れたベランダの彼方
めくるめく夜道はまだ永いな
窓枠にかけた腕はもう離れたまま

深夜の散歩は まぶたを閉じて開けば瞬く間に
いきたいようなとこ目指して 誘導灯が点る

夜更け過ぎた街を飛んでいく
そんな僕は熱を帯びたまま
やわな風は雑多な音を
攫い流し頬に触れ溶けた
寄せ返す波間を漂うようにして
街の灯眺めてぶらぶら

夜に鳴いたら羽根が生えていた
ひろい空はやけに淡い色をしていた
月明かりも空にない夜は
燃える街灯がやさしさを焚いていた
落ちては上がってを繰り返しながら
祈りをささげて 永遠なる世界へ
夢うつつ越えてぶらぶら


幽霊船はうつらない

ネイビーないたみにつつまれて
ひかりにくるまれて
異星人になっていっとき
草の根絡む路地

幽霊船はうつらない
熟した鋭いフィルムには
誰もいない透明な渚に漂っている
幽霊船はうつらない
浅く燃える地面蹴り上げて
隠した大きな指で秘密裏に旅立っていく

体温はくらくてややぬるい
さえずりが重なり蒸れる町
繋いだ手を擦っておこすトーチ
揺れてまた立つ波風たち

幽霊船はうつらない
熟した鋭いフィルムには
誰もいない透明な渚に漂っている
幽霊船はうつらない
浅く燃える地面蹴り上げて
隠した大きな指で秘密裏に旅立っていく

千切雲が薄明かり透かすとき
部屋の隅と角 目と目が合う夜に
窓辺に吹く風にシャツら揺れるように
笹舟 水面に 波紋 描くといい

永いやさしい手触りが
ぼやけて伝わらないように
針の穴に通すような糸を紡いで鳴いている
永いやさしい手触りが
ぼやけて伝わらないように
針の穴に通すような糸を紡いで鳴いている


春の夜から

さいきんなんだかさびしくって
身体はときどき熱くなるんだ
血潮のめぐり
春の夜道は長袖をめくる
にじむ薄汗を風が撫でる
いつもの調子

眠りの町で鳴く狂走曲だけが
ぼくたちの切実さを知っている

終電を待つ上り列車のくらいホームは
すべてを吸い込んで仕舞いそうな
誘い風が吹いている
闇夜にふっと消えてしまう
大停電するような
劇的な瞬間は刹那でしょう
煙のような生ぬるい暮らしが
手招きをしている
春の夜から 春の夜から

さいきんなんだかくるしくって
君のことを思い出していたんだ
季節は巡り ぼやける手触り
春の夜道はなんか騒がしい
例えばそこに誰もいなくても
聴こえるメロディ 記憶のメドレー

めくった長袖をもどすように
注射器が小雨をさしてくる

終電を待つ上り列車のくらいホームは
すべてを吸い込んで仕舞いそうな
誘い風が吹いている
闇夜にふっと消えてしまう
大停電するような
劇的な瞬間をもういちど!
煙のような生ぬるい暮らしが
手招きをしている
春の夜から 春の夜から

今夜だまされて生きちゃおうかな
今夜だまされて生きちゃおうかな
今夜 目が覚めちゃうような狂走曲が
ぼくたちの切実さを抱いている

終電を待つ上り列車のくらいホームは
すべてを吸い込んでしまいそうな
誘い風が吹いている
闇夜にふっと消えてしまう
大停電するような
劇的な瞬間は刹那でしょう
煙のような生ぬるい暮らしで
手招きをしている
君の名残りが 永遠に続くような
春の夜から 春の夜から


波音劇場

波音と海鳴りが寝惚けた身体ゆらす
くたびれた灯火が朝方の闇てらす
遠ざかる何事も 見つめたものの他には
霧雨のその先に何があるの?

朝もやの中を あまもやのなかを
住み慣れている街角 勇み足で踏み出す
朝もやを渡ろう あまもやの外を
海が照っている 足跡 残すことなく帰る
 
「いつまでもふたりで」と笑えたフィルムえらぶ
ぼやけても つぶさでも まだきれいにおぼえてる
遠ざかる船の声 カーテンコールのようだな
今すぐに漕ぎ出せば間に合うの

ただ小屋の中を鳴り渡るワンダーウォール
聴き慣れてる音にもめざめの香りにじむ
朝もやを渡ろう あまもやの外を
海が照っている 足跡 残すことなく帰る


ひらく (Album ver.)

旧市街地では猫が焚いている瞳の焔が闇で光る
気まぐれになって街が眠るなか誰も気に留めず歩けたらいい

旧市街地では 圭子が唄えば夢が夜ひらき焔ゆれる
誰も彼も皆 つられて躍れば窓辺の少年が歌を綴る

"感電するような空腹で でっかい花火を打ち上げろ
身悶えるようなさびしさで君の名前をなぞっている"

こころから こころから ひとつ願えばかなうような
わからないことばかり この手に収まらないばかり

幼さがうめき回るようなでっかい秘密を打ち明けよ
だいたい夜は独りぼっち種を持ちよって燃やすんだ

こめかみのあたりから 耳元へ旅を誘うような
一瞬を迷うことはない ゆるやかになだれ込むのさ

こころから こころから ひとつ願えばかなうような
わからないことばかり この手に収まらないばかり

旧市街地では猫が焚いている瞳の焔が闇で光る
気まぐれになって街が眠るなか
夢が夜ひらく 焔ゆれる


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なかたにつよし
1st Full Album
『幽霊船はうつらない』

1.Upstairs
2.蓄光
3.高速ラジオ
4.替わり目
5.jetlag
6.深夜散歩 (Album ver.)
7.幽霊船はうつらない
8.春の夜から
9.波音劇場
10.ひらく (Album ver.)



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〈アルバムライナーノーツ〉


〈幽霊ラジオ〉

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