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ストーリータイプ08「戦士が似合わないことをするハメに」
物語のストーリーは、「主人公の行動」によって7つのカテゴリー分類ごとに、計24の「ストーリータイプ(物語類型)」があります。
今回は「主人公が戦う、争う、問題を解決する」バトル/トラブルシューティングのカテゴリーに属するストーリータイプ08「戦士が似合わないことをするハメに」をご紹介したいと思います。
「戦士が似合わないことをするハメに」はどんな物語か?
「戦士が似合わないことをするハメに」は、バトル/トラブルシューティングのカテゴリーのストーリータイプの中でも異色の物語であり、かつ高い人気を誇る物語です。
このストーリータイプは、主人公が戦う/問題解決をする物語でありながら、戦いだけでなく「主人公がもっとも似合わないことや苦手なこと、嫌いなことするハメに陥ってしまう大騒動」も描かれる、とても楽しく愉快な物語です。
このストーリータイプでつくられている代表的な作品
このストーリータイプでつくられている既存の作品には、次のようなものがあります。
・映画『キンダカートン・コップ』
・映画『デンジャラス・ビューティー』
・小説、アニメ『はたらく魔王さま!』
・小説『保育の騎士とモンスター娘』
・小説、アニメ『フルメタル・パニック』
ドラマ『ダブルフェイス 潜入捜査編/偽装警察編』
……などなど。
「戦士が似合わないことをするハメに」のつくり方
この物語をつくるには、次の3つの要素を決めるようにしましょう。
1.「戦い/事件解決のプロフェッショナル」である主人公と、主人公が倒すべき「敵」/解決すべき「問題」。
2.主人公が敵を倒す/問題解決する過程でするハメになるに「主人公にもっとも似合わない、苦手な行動」。
3.主人公が「戦い/問題解決」&「似合わない行動」の中で、どんな大切なことを学び、何に気づくのか。
このストーリータイプの主人公は「戦い」または「事件解決」のプロフェッショナルである人物です。
たとえば、戦士、騎士、兵士、傭兵、警察官、麻薬取締官、機動隊員、特殊部隊員など、これまで戦闘やトラブル、事件解決にまつわる専門的な仕事しか行ってこなかったような、その道のスペシャリストです。そんな主人公を設定してください。
また、敵対者、犯罪者、悪人といった「主人公が倒すべき敵」がどんな存在かを設定してください。
トラブルシューティングの場合は、主人公は「そのトラブル、事件を解決する専門家」となり、主人公がどんなトラブルや事件を解決するのか、その「解決すべきトラブル、事件」を設定しましょう。
この物語では、敵を倒す、事件解決のためには「特定の行動」を行うことが必要になります。
その「行動」は、戦いや事件解決のプロフェッショナルである主人公にとってまったく似合わないような、もっとも苦手な、やりたくない、嫌いな行動となります。
つまり主人公は、敵を倒す/事件を解決するためには、その「自分の苦手な、やりたくない行動」をしなければならない状況、立場に置かれるのです。
この「主人公が絶対にしないような、苦手な、嫌いな行動」をしなければならなくなる、するハメになるという展開、主人公と行動のギャップが、この物語のいちばんの面白さになるのです。
たとえば、『キンダカートン・コップ』では、ロス市警最強の刑事である主人公が、犯人逮捕のための潜入捜査として幼稚園の先生をすることになります。小さい子供たちなんか相手にしたことがない鬼刑事が、もっとも苦手な幼稚園の先生をしなければならなくなるところが、この作品の面白さになっています。
そんな敵を倒す/事件解決のためにどうしても必要な「主人公がもっとも苦手な、もっとも似合わない、やりたくない行動」を設定して、それをしなければならなくなるようにストーリーを展開させましょう。
この物語も他の「バトル/トラブルシューティング」カテゴリーのストーリータイプと同じく、主人公が戦いの中で大事なことに気づき、学び、変化、成長します。
ただ、この物語の場合は、成長にまつわるドラマは主人公が「似合わない、苦手な行動」をする過程で発生することがほとんどです。そんな成長の要素も忘れずに描きましょう。
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この「戦士が似合わないことをするハメに」について、さらにお知りになりたいという方は拙著『ストーリータイプコレクション[2]「バトル/トラブルシューティング編(上)」3種』にて、くわしく解説されています。
今回ご紹介した「戦士が似合わないことをするハメに」の特徴や作成のコツ、そしてこのストーリータイプの物語を組み立てるうえで土台として使える汎用プロットテンプレート「ストーリーフレーム」も収録しています。
ご興味のある方は、ぜひ合わせてご一読ください。