見出し画像

A Stupid Fellow

たまには日常的な話をしよう。
俺は5階に住んでる。
大きな窓からはちょうど山に向かう電車が見える。
遮るものは何もない。
ようやく嫌いな夏が重たい腰を上げて立ち去り、
俺の季節が来た。
俺の襟足を通り過ぎる夜風が心地よく、
俺はそいつを抱きしめて眠った。

目覚めた時。
クローゼットの棚にしまってあるTシャツの山が気になった。
理由はなぜかは分からない。
無心で1枚1枚を畳みなおした。
特に丁寧に畳んだわけではないが、がむしゃらに。
器用に積み上げると何事もなかったかのように棚に戻し、俺は再び眠った。
少しだけ夢を見た。
故郷の川沿いを祖母と歩いていた俺はまだ小さかった。
後ろから追いかけて来た弟と並んで走り出した。
そして夢が終わった。
目覚めると17時。
外は霧雨で、俺は決まったタブレットを放り込み副作用で再び眠った。
30分ほどで目覚め、大好きなリチャード・ブローティガンを読み、大人ぶって愛とは何かを考えてみた。
そんなこと、分かるはずもないのに。
別に病んでるだとかそういうことは一切なく、
俺はただただ退屈だった。

そうだ。これが平凡であり日常だ。
たまに訪れるこの何も起こらない日常が、
とても愛おしいことに気がついた。
俺は馬鹿だった。
かけられていた魔法は今、ようやく解けた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?