1年が過ぎ
2024年1月10日の早朝。
彼女は天に昇り、宇宙を突き抜け、魂ひとつ残さずにこの世を去ったと俺の元に報せが届いた。
こんなにもシンプルで、そしてこんなにも綺麗な去り際にも関わらず最期に言葉を交わすことも叶わなかった。
彼女が俺たちにくれたものは一体何だったのだろう。
考えようによっちゃ何にもくれなかったのかも知れない。
本当の彼女を知っていた人間はこの世に何人いるのだろう。
それでも彼女は命を使い自身を貫き、後腐れなく去っていった。
そんな彼女を俺は誇らしく思う。
そしてそんな彼女が愛したこの街、人、飲み屋、音楽、芸術を俺もとても愛おしく思う。
この先に続いていく自分の人生のお供にしながら俺は思い出す。
飯もろくに食えてなかった6年前。
ちゃんと食べなさいってご馳走してくれたラーメン。
飲ませてくれた酒。
見せてくれた写真。
そしてクソガキだった俺の夢を真剣に聞いて背中を押してくれた。
どうか安心してくれ。
その夢は叶わなかったけど、俺はなんとかやってるぜ。
しかもあの時とは俺も変わってちゃんと健康的に太ったし、何よりもカッチョイイぜ。
見せてやりてぇけど、しばらくはお預けだな。
俺たちは絶対に忘れない。
アンタの声も
アンタの笑った顔も
アンタの髪型も
アンタのお気に入りの洋服も
アンタの自慢のおにぎりの味も
アンタが聞かせてくれたイギリスの音楽も
俺たちはそんなことを思い出しながら今日もこの街で白ワインでやる。