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俺にはずっと探し求めている匂いがある。
どうやら言葉で表現するのは不可能なようで、俺はどこのショップに入ってもそれを見つけられずにいるのだ。
特徴のある香りではなく、どこか落ち着きがある香り。
そしてそれは、少年時代に生い茂る竹藪の中を駆け抜けて砂利道を小さな足で踏み鳴らし、吹き抜ける風に身を任せたあの風の香り。
または初恋の子がくれたチョコレートの包み紙の香り。
いや。
色気づいて来た思春期に塗りたくった制汗料の香り。
違うな。
隣にいる風呂から上がったオンナの髪の香り。
高級なワインが放つ芳醇なカリフォルニアの果実の香り。
そいつですっかり酔っ払ってダメになっちまった朝のシーツの香り。
あぁ今日も俺の鼻は効かなかったな。