執行役員海外担当が語る資金調達の裏側②世界的大企業アラムコVCからの資金調達のポイント解説
こんにちは、テラドローン執行役員の羽渕です。
前回の続きになりますが、なぜテラドローンが世界的大企業のアラムコから選出されたのかという点について、実際に実践してきたことについてお話しします。少しでも参考になれば幸いです。
前回のnoteについては下記をご覧ください。
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・日時 : 2023年2月8日(水)18:30~19:30
・場所 : Zoomによるオンライン開催
・参加対象 : 海外事業に興味のある方
※一部英語セッションあり
資金調達が成功した大きな要因
1.世界での実績と独自テクノロジーを利用した競合優位性のある戦略
バリエーションが上がる前に買収する
2018年はドローン市場の黎明期の初めで、多くのドローン関連企業が世界中で創業され始めていました。その時代の中での海外企業買収は、買収する企業数が増えるほど交渉力が強くなります。海外のスタートアップも、欲しいのは自国以外の海外のネットワークですが、限られた資本のスタートアップにとって、それは難しいです。当社としても1社目、2社目の買収の交渉には、多くの時間と資金を要しました。しかし、1社、2社良い企業を買収すると、その後の買収では正のサイクルが回り始めます。今までは”日本でしか実績ないスタートアップ”だった当社が、”日本でもアジア各国でも実績がある企業”となり、アジア市場にリーチが難しかった欧州の企業に対しての交渉力が上がりました。その後、欧州で実績のある企業を買収すると、欧州、アジアにネットワークのない、北南米の企業に対して交渉力が働きます。この様な流れで、交渉力をあげ、バリエーションを大きく下げ、ミニマムの出資で多くの買収を成功することができました。
業務締結を活用し出資のリスクをミニマイズする
テラドローンはこれまで全ての企業を買収している訳ではありません。戦略的に重要となる拠点及びテクノロジー企業はマジョリティ買収、それ以外は業務提携にとどめております。その買収と業務提携の境目を見極めるために、当社は、出資合意を得たMoUの段階で担当者を現地に派遣します。買収前に、Due Diligence(以下、DD)というプロセスを経て、出資を行うのですが、限られた資本のスタートアップにとって、外部機関を雇い、厳密なDDを行うことは実際難しいです。特に多くの企業を買収する場合、その中で有効的なのが、出資契約のMoU締結から本契約締結までの間、事業シナジー創出や買収後の事業計画の議論をDDと並行して行い、内情を把握することです。その中で、出資検討先企業の創業者の人間関係、売上見込みの実際の可能性など、DDではわからない重要な生の情報を獲得します。DDに加え、これらの生きた情報を入手することで、出資か業務提携を精度の高く見極め、出資する企業をミニマイズして行きました。
PMI(Post Merger Integration)の実施
買収するだけでは企業は絶対に成功しません。テラドローンのカルチャーや戦略を浸透させるため、買収先や業務提携先には経営層の人材をPMIのために派遣します。PMIを各社で適切に実施することで、テラドローンと買収先企業の事業シナジーを創出し、当社のカルチャーを浸透させ、事業を成長させます。結果、買収先での実績はテラドローンの実績として蓄積されグループの成長に繫り、また、PMIを実施した当社の経営人材のレベルアップにも大きく寄与します。
2.グローバル市場での新規案件獲得に必要な能力
英語で質の高いコミュニケーション能力
大前提ですが、やはり語学力は重要です。でも、英語が喋れる、理解できるだけでは不十分です。企業の海外事業部で働かれている人なら多くの方は英語は喋られるでしょう。しかし、その中で海外で新規顧客に売り込み、契約交渉、契約締結まで行った人という条件を加えると、一気に数が少なくなると思います。海外グループ会社間でのコミュニケーション、付き合いの長い顧客とのコニュニケーションは内容が一定決まっていて、また信頼関係もすでにあります。しかし新規案件はそれらがない中、海外競合企業と競争し、新たに信頼を獲得し、契約交渉、契約締結を行う必要があります。それを達成するには、自分の感情や思いの伝達、製品や自社の優位性をロジカルに伝える、契約や技術的に複雑な内容も適切に伝えられる力は、とても重要になります。日本で実績のある営業マンの方なら、日本の顧客向けに行ってるようなアイスブレイク、製品の売り込み、契約交渉と締結を英語で海外キーマン相手でもほぼ同じようにできるレベルが必要になります。
競合優位性を明確に訴求する
国内の事業開発や営業活動では、競合を名指しで、当社とのその差を説明することを少し控える傾向があるかと思います。しかし、海外、特に本件の様なグローバル案件では、明確に他者との差を示し、説明することが重要になります。それは、そもそも文化も背景も全然異なる人同士が商談を進める上で、行間を読むハイコンテクストな説明は伝わらないリスクが高いからです。どれだけ語学が流暢でも、先方の理解は自分が伝えていることの8割ぐらいと考えるのが良いと思います。そして、明確に競合優位性を伝えるためには、競合情報を明確に把握しておくことがとても重要です。ネット上にある情報だけでなく、実際の面談や営業活動で得た競合他社の売上高、従業員数、製品/サービスの詳細情報、戦略フォーカス、市場での評判、今後の戦略も踏まえ、具体的に理解しておくことが重要です。例えば、上記グローバルランキングにも記載されている競合の情報に関して、”XX社は去年の売上は約xx億円で、主な顧客は測量・電力セクターの北米で、シンプルな写真サービスに特化している。よって、持っている技術も写真を3次元化するソフトのみで、点検サービス実績や、ハードウェアの技術、プラットフォームソフトなどがなく、当社と比べて技術面で競合優位性が低く、労働集約型の企業である”、などと伝えます。実績もブランド力もある当社が、この様に具体的な事例や数字を交えて競合優位性を明確に伝えることで、より当社の言葉に説得力を持たせることが出来ました。
3.質の高いフォローアップ
ロジック作成に必要な質の高い情報
アラムコからの課題は、”サウジ子会社の10ヵ年事業計画書の作成”でした。説得力があり、かつ詳細な事業計画のロジック作成とそのエビデンス収集を行う必要があり、それに対応するには、幅広い市場用途の理解と経験及び実績が重要でした。海外事業をずっと担当してきた私は、当社の世界各国での各用途の市場状況や実績内容は全て把握できていたため、サウジアラビア市場では、建設市場とオイルガスなどの点検市場にフォーカスすべきという戦略を、明確かつ論理的に、事例を交えながら説明することができました。また、サウジアラビアにも実績があったことから、サウジアラビア市場に関しても当社は非常に具体的な現場情報や市場情報を持っていました。それらの”質の高い情報”を活用できたからこそ、説得力があり、かつ具体性の高い事業計画を作成することができました。
迅速な対応で信頼を勝ち取る
上記の通り、社内リソースが限られている中、対応すべき課題は膨大でした。しかし、それは他社も同じ状況のはずです。これをチャンスと捉え、課題提出完了するまでの約3-4ヶ月間、既存業務を徹底して効率化し空き時間を捻出、また営業時間終了後や営業時間前も使い、追加要求にも迅速に対応して行きました。成功するのか不明瞭な中で、多くの時間を投下する決断をしたからこそ、競合よりも圧倒的にスピーディーな回答を続けることが出来、アラムコの担当者から高い評価を得ることができました。提出した課題のfeedbackなどは、当社を優先して対応してくれるようになり、その後も迅速な対応継続していると、自然とアラムコの担当者が当社に一番時間を使う様になり、ついには営業時間外を使って、当社の資料のブラッシュアップをアラムコが行なってくれる様になりました。結果、競合他社と比べて圧倒的に説得力のある事業計画書を作成することができました。
最後に
今回の資金調達が実現できたのはテラドローンが創業期から大切にしているスピードと当事者意識、そして、世界で勝つという強いマインドセットがあったからです。今後もこれらの強みを更に磨き続け、テラドローンはこれからも大きく成長していきます。
今回の発表の裏側として、資金調達のポイントをお話しましたが、グローバルでNo.1を目指す当社は、今後更に積極的にグローバル展開を加速していきます。
ベンチャーとして、グローバルで強力に展開している企業は数少ないと思います。現在将来の海外経営人材を募集しているため、ぜひご応募をお待ちしています。当社が重視するChallenge as global No.1のもと、新産業領域で世界に通用する企業を一緒に創っていきましょう。
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