ステータスレポート その2
前回の続きでございます。
最も難しい問題
起業してサービスを構築した後、最も難しかった問題が「値付け(プライシング)」です。マーケティングにおける最重要課題ですが、まわりに自社サービスと一致する業態がなかったことで、いうなれば「気まぐれ」で値段をつけました。ただ、その後に業務を続けるにおいて知った知識、例えば「研究者の予算の幅」などを目標に値段をつけられるようにはなってきました。
すでに存在する製品であれば一度値段をつければそれを基準にすれば良いですが、オーダーメイドで開発を行う場合も頭を悩ませました。また見積もりを提示するときも「提案があまりに高額過ぎて引かれたらどうしよう」と、弱気な見積りになる傾向もありました。「相手の会社はどの程度なら払ってもらえるか?」というものの見極めも難しいものでした。この辺はいまだに正解はわかりません。ただ、相手が開発会社なら「web開発の一般的な費用」あたりから検討を始めており、ずいぶん見積もりの精度は高くなってきたと思います。
あとは、一度値段を決めても、状況に合わせて変えていけば良いと思います。見かけ上は同じ値段でも最終的な売上で調整する、と言うのはよくやるテクニックです。恥ずかし気もなく臨機応変に変えていけば良いと思います。
やってきたこと、やっていなかったこと
私は開発の上流に位置するマーケティングの人間でした。それまでやってきたことは「製品やサービスの構成・仕様を考えること」「顧客の要求を聞くこと」「特許を取ること」などが挙げられると思います。
今になって「やっておけばよかった」と思えるのが「営業活動」でした。これは前述のプライシングへの理解にもつながるのですが、営業部として営業活動を行ったことがなかったため、営業にまつわる資料や作法などが全くわからず、一つのものを売るのにかなり無駄な時間を割いていたと思います。
例えば恥ずかしながら見積書や請求書、納品書がどのタイミングでどのように提出しないといけないのかなども知りませんでしたし、注文書や注文請書の意味もわかっていませんでした。最近で言うと相見積もりの意味もようやくわかりましたし、知らないことばかりでした。幸いにも前職の営業部に所属していた同僚の方に今は営業の作法やルールなどを教えてもらいながら、少しづつ理解できてきていると言う感じです。
もちろん、全て完璧なスキルを持って起業すると言うのはスタートが遅過ぎますので「足りない部分があることを認めながら」スタートを切るしないわけです。もちろんお金だってございません。まずは持っているスキルを活かすこと、そして事業にとって必要だけど足りていないスキルをどのように補うか、これが事業を始めてから考えていかないといけないことだと思います。
起業後に学んでよかったこと
もともと美術が好きだったのですが、起業すると割と自由な時間を作れますので、大量の美術本を買っては出張中に読んでいました。他にもインダストリアルデザイン系の本も読んでおりましたが、その手の時間を保つことができたのが本当によかったです。
とても抽象的ですが「美しさ」「美しいと感じるセンス」は起業家やマーケターには必要な要素だと思っております。美しさとは共感などの感性を揺さぶるものです。その意識が、少ない人数でパフォーマンスの良い製品を構築できた、一つのきっかけになっているとは思います。ビジネスモデルとは「ピタゴラスイッチ」におけるアルゴリズムで見られるように「何か一つのきっかけに対する作用と反作用の連続」です。そして少なくとも私はピタゴラスイッチのアリゴリズムを美しいと感じており、製品や事業を展開する上で参考にしている一つの部品です。
美しさのセンスを学ぶのは、本当に死ぬまで続く勉強だと思っております。今後このようなセンスとビジネスへの影響など、もう少し調べてみたいとは思っております。