人生に乾杯 15(「腫瘍持ち」の多さ)
周りに癌(悪性腫瘍)患者が多いことに気づいたのは、自分が罹患してから。「これほど多いとは思わなかった」というのが正直な感想だ。癌、悪性、患者、どれも自分で好んで使う感じではないが、本回では避けえないので、読者には漢字使用の頻度が少し多くなることをお許し願いたい。
まずは実母。昭和15年(1940年)生まれの現在80歳。4年ほど前に胃がんになり、築地のがん研で全摘した。当時は実父が介護付き老人ホームにいたが、僕が幼少のころから両親の仲が悪かったせいで、母からのたっての希望で父には言わずにいた。父はその後他界したが、母は今も「あと3年持つかしら」と言いながら、ピンピンしている。その母方が、がん家系だ。ある県の村助役まで勤めた祖父は70歳を超えてから、産婆だった祖母は90歳になってからの発症だ。
昔、癌は遺伝すると言われた。癌は細胞が分裂する際に起きる突然変異が要因とされ、詳しい説明は専門医の解説に譲るとしても、今でも似たような理解らしい。僕の場合、9月4日にRaffles Hospitalの医師とビデオコールした際、担当医からかなりしつこく家系について聞かれた。むしろ、聞かれたことを元に「自分の父方は癌家系ではないんだなあ」と思ったのを覚えている。ちなみに、父の家系は兄弟4人全てが男で、父は長兄だ。その父は養護施設で3年前に心臓発作で亡くなった。誕生日を迎えた翌日のことだった。誕生日に電話をできなかったことを僕は後悔した。
3番目は糖尿病の合併症で、父から数年前に亡くなった。2番目は今もピンピンしているが、4番目は現在糖尿病予備軍だ。
知人にも癌が多い。シンガポールで一緒になった人では、日本人(50歳前)の日本にいる母がそうだ。また僕の入院中には、ある用件で東京の仲良し弁護士と連絡を取ったところ、その母がそうだった。いずれも僕が罹患したのを知って向こうから告白してきた。さらに、今はこの場で言えない人もかかっている。
著名人にも多い。YTさんは脳腫瘍、英国ロックバンドメンバーもそう。他にもHKさん、HDさん...先日寄付した沖縄の金城楓空さんもそうだ。僕が成田に入院していた日記をめくると、8月9日にこういう記述を見つけた。「SmartNewsを見てると、いち日に1本はがんの話がニュースになっていて滅入る。症状も治療法も生存率も人によって違うのに、どれも紋切り型。いや、それだけ患者が増えているということなのか」。
最近、NPO法人脳腫瘍ネットワークに入った。脳腫瘍の治療を請け負う全国の病院数は170しかない。僕は、国際医療福祉大学病院(成田、三田)の脳外科(脳腫瘍)と消化器外科(大腸癌の肺転移)で治療を受けている。ネットワークのリストには入っていないが、時間の問題なのだろう。いずれにしても、脳腫瘍の認知が上がることを願ってやまない。
(写真は2016年4月30日、シンガポールのコニー島で現地での仲良し夫婦と。この夫婦にはうちの子どもたちをいつも歓待してくれた上、我々夫婦の癌でも大変お世話になり、今も感謝に堪えない。写真撮影者は僕で、足は写っていない。続く。)