人生に乾杯 21(堅い殻と共感力)
妻から「あなた最近、人への共感力が足りないよ」と言われ、ハッとした。9月の退院後、薄々気づいていたことを言い当てられしまった。心に重石があることは分かっていた。脳腫瘍のこと、肺に転移したがんのこと、頭に着けているオプチューンのこと。知らず知らず、すべてが自分を暗い気持ちにさせていた。日頃は、家族にできるだけ普通に接しているつもりでも妻や子どもたちは見逃さなかった。今回も「言われちゃった…」というのが正直な感想だった。彼女への返事に言い訳をいろいろ考えてみたものの、どれも無駄に終わった。自分でも説得力がないと分かっている返答もあれば、彼女の切り返しが上手だったものもある。
彼女の一言は、いつも僕を変える。ワンステップ違う地平に入ることができる感覚だ。その瞬間が好きなこともあって彼女と一緒にいるのだが、今回は「明るく明るく」と言っていた自分は、結局本当は明るくなんかなかったと気づかされた。「あなた考えすぎだから」という意見も当たりだった。
Twitterをフォローしている人に高知東生さんがいる。薬物依存から立ち直った俳優だ。今は作家としても活動している。彼の書き込みに次の文言がある。公開情報なのでそのままスクリーンショットを貼り付ける。
赤いハートマークは僕がつけたもので、当(まさ)に自分の気持ちを言い当てられた気がした。
僕は堅い殻に閉じこもっていたのかもしれない。他人の感情が流れ込んだ時に、表面だけで取り繕ってたのかもしれない。仕事の相手ならなんとかなるとしても、家族にもそうだったということか。高知さんの文章を読んで愕然とし、そして大反省した。
こんなことではいけない。楽になろう。
(写真は2019年3月24日、シンガポールで米朝会談が開催されたセントーサ島カペラホテル。在京アドバイザー(ワイシャツ後ろ姿)が来星し、是非見たいというのでお連れした。施設も値段もゴージャスだった。青い服の妻と頭だけ見える息子も一緒。続く。)