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人生に乾杯 30(4泊5日入院記、その1ー家族愛再発見)

前号でお知らせの通り、4月20日から24日まで三田病院に入院した。前日19日のPCR検査を終えて一度自宅に戻り、翌日入院という段取りになった今回は、肺にある腫瘍(大腸がん転移)の処置に移るための準備で、消化器センターでCVポートを付ける手術がメインだった。

頭に付けているOptuneをどうするか。脳神経外科の田部井医師に予め相談してみた。「あ〜でもないこ〜でもない」と言う僕に、田部井医師は「消化器センターの看護師は脳腫瘍治療の器材など見たことないから、しれっと持ち込んでしれっと持って帰るのが一番得策」と何食わぬ顔。その通り、器材は「しれっ」と持ち込んだ。もちろん、消化器センターの主治医である加藤亜裕医師にはそのことをお伝えし、許可を得ていた。

20日当日の朝は、あいにく雨が降っていた。航空機の機内持ち込み可能なサイズ限度一杯のキャスター付きスーツケースに電源やバッテリーなどを詰め、タクシーに乗り込んだ。入院道具と合わせてスーツケースが2つになった。4泊5日なのに大移動。御守り代わりにと、予め持って行くことを決めていた娘作成のクジラ(写真。シンガポール時代に作ってくれたもので、昨年成田病院に入院した際にも肌身に持っていた)を、そこへポイっと投げ入れた。

その娘、朝の荷造りの1時間余り前に、春に合格したばかりの高校へ通学するので家を出ようとしたが、「今日帰ったら父ちゃんいないよ」と言うと、弾かれたように振り返って玄関先でハグしてくれた(💕)。自分の容態について妻は元からそう(だから僕は頭が下がりっぱなし)なのだが、思春期を脱しつつある娘がそこに加わって心配してくれていると思うと、嬉しくなった。これなら毎月入院してもいい(ウソ)。

退院前日の23日、何の気なしにクジラの写真をSNSで送った。「この子が見守ってくれたんだよ」。すると、娘から「いええーーーいいい!!!!!」「持ってくれてるんだねー〜」「うれしです(╹◡╹)」という返事が返ってきた。

さて24日。やはり荷物があるからとタクシーで帰宅した。すると、小6の息子が満面の笑みで「お帰り〜〜!!」と、得意のオチョけが入りながらも、これまたハグで迎えてくれた。彼も嬉しかったに違いない。僕もまた、嬉しかった。

昨年9月に成田を退院した時、「自宅に帰った」感覚はほとんどなかった。2か月も病院に入っていたし、帰ったはずの家は新しい場所だった。自宅にはすでに家族3人が住んでいて、自分の入る「場所」は最初は見つけるのが難しかった。お隣さんも、当たり前だが新しい人たち。かつてお隣同士だったS家ではない。でも今回は違った。こんな生活が続けばいい。

(続く)