住友春翠と『金色夜叉』
今朝の朝ドラ「あさが来た」で、田村宜が『金色夜叉』に夢中になっていた。
『金色夜叉』と言えば、住友春翠にもエピソードがある。エピソードというよりご子息寛一による暴露といったほうが正しいかもしれない。
そもそも寛一の著書『Tへの手紙』自体が非売品で、まさか私などに読まれるとは想像もしていなかったに違いない。
春翠が亡くなった後、寛一は別荘のあった熱海へ行き、机の引き出しに「金色夜叉」を見つける。春翠が熱海にいたのは60歳ごろだったそうだが、それまで小説を読んだことがなかったらしい。しかし熱海に来て、ふと読んでみようという気になった。その後の寛一の一行が痛烈である。
本を見たところ一向通読した様子はない。ほんの少しで止めたらしい。
このエピソードは伝記『住友春翠』にもとりあげられている。伝記によると、春翠は、広瀬宰平に自伝の序文を求められたときも「小説を読んでも得るものがない」などと記して兄の西園寺公望を嘆かせている。
小説を読まないことと読書をしないことは違う。小説を読まなくても、彼は教養を十分に身につけていった。国語の授業といえば小説を読んで登場人物の気持ちを考えて・・・というものが思い浮かぶが、もっと大事なことがあるような気がする。
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