妻の記録:伝家の宝刀を抜いた

「そんなこと言うなら、一緒に暮らせない!」

涙顔の表情と唇を震わせるように突きつける。

右腕の調子が少し良くなってきたのか、台所でキッチンペーパーを見つけてゴミ箱にポイと捨てる。自分がやってきた方法で、キッチンのアイテムを処分する。こちらがどのように処理しているかどうかは関係なく、自分の方法でやり抜けようとする。

これが意外とイラッとさせる。使うつもりだったキッチンペーパーを捨てられて、思わず、「どこに捨てたん。」と発っしてしまった。用心していたが、きつめに言ったらしい。

「そんなこと言うなら、一緒に暮らせない!」

声が震え加減である。いつも何か指摘すると、伝家の宝刀を抜く。日頃優しくしている分、反動は怖い。

見ると、自分で除けていた。また、反省猿が「やってもーた。」と呟く。妻の膝に片手を突いて慰める。妻は何も悪くない。しかし、

「そんなこと言うなら、一緒に暮らせない!」

と言われると、慰めに走る自分がいじらしい。