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習作:アシアカエビの
画像:下記から。
夕方のスーパーで鮮魚コーナーに立ち寄った。一人のシルバー主婦がエビに見入っている。
地元産だ、アシアカエビ、知る人ぞ知るエビ。味がしっかりしている。まだ、エビは足を動かし、時に跳ねている。よくアシアカエビを見つけ、買う。思い出す味に負けてしまう。それほど味が印象的。
地元で漁獲した小エビ、といっても10センチ位、見つけると、タマネギとかき揚げにして食べてきた。エビのうまみに、タマネギのうまみが重なり、すこぶる喉を潤し、母の手料理を思い出す。家の前は鮮魚屋だ。母はおかみさんに教わりながら、夕餉の魚料理をしていた。その中の一品にエビのかき揚げが食卓に美味しい色どりを添えていた。
シルバー女性は一人で買い物しているが、家では定年を過ぎた夫が待っているらしい。シルバー主婦は話しかけてきた。
「このエビ、美味しそうだね」
「そうですね、地元産だし」
シルバー主婦はエビに付けられている値札に目をやった。「ちょっと値段が」エビの値段の変化はある。その時はいつもより少し高い印象がした。高いといっても、1匹130円位。中エビとしては、飛び切り高いわけではない。二人なら4匹だろう。520円、買えないわけではないだろう。しかし、1日の食費代が頭にあるのだろう。逡巡している。客を見つけてきた店員が勧めに出てきた。その勧めに応えて5匹のパックを買った。シルバー主婦も続けて買うのだろうと思っていたら、※服ランクは自分や妻よりもかなりよい。
カートを翻した。「あれっ、買わないんですか」思わず発した。立ち止まる様に、シルバー主婦は「だって、たかいもん」言葉の割には、心持ち表情が緩く、明るい。他のメニューを頭で描いているのか。同じ買うなら、夫の気に入るものをと思っているのか。シルバー主婦はカートをそのまま押して、果物コーナーに行った。
家に帰り、アシアカエビを天ぷらにし、オニオンリングを添えた。シルバー主婦は自分の好きなものよりも夫の好きなものを選び、夫の笑顔を喜んでいるかもしれない。
妻もエビ好き。先日、1匹だけ今まで見たことのないアシアカエビの大きさ、飛びついて買った。併せて5匹。妻に大きなエビを、3匹が腹におさまる。シルバー女性も今度は自分のためにアシアカエビが買えるだろうか。