妙見神社に行く
あるとき、お盆が過ぎた頃、妻が思いついたように
「子どもの時、遊びに行った親戚の近くに神社があったのよね。」
「そこで、お祭りがあったの。」
「お店も出て、多くの人が来てたわ。」
多分、お米の収穫を終えて開催されてたようだと説明する。
「あそこに行ってみたいの。」
その近くに「ヒメヤマツツジ」が咲く場所がある。ヒメヤマツツジは広島県(西部が主)と山口県(東部から中部が主)に分布すると記されているが、野生のツツジは県境を知ることはない。ヒメヤマツツジの分布の北限が島根県との県境を跨いであるだけだろう。
秋のヒメヤマツツジを観察に行く機会もできるので、2つ返事で行くことにした。
夏が過ぎ、秋が来た。祭りが開催された頃に合わせて「妙見神社」に行くと、小さい原に、両脇が水で溢れたように泥濘んでいる道が1本まっすぐに神社の門に向かって伸びていた。
山門の周辺を見てみると、ある程度整備されているようで、清浄な雰囲気がある。お社は小高い山頂にあった。階段を登っていくと、タチツボスミレが咲いている。階段を上がり、お社にお参りする。
それほど小山は高いものではないが、それでも周辺が見渡せる。妻は思い出そうと試みるが、記憶を辿っても雰囲気しか思い出せないでいる。微かに遠い記憶の中で小さかった自分が親戚や姉妹と一緒に祭りの中で思い思いに楽しんでいたことしか思い出せない。
「賑やかだったのよ。」
妻がぽつりと呟く。
山門に返礼し、車にむかう。妻と歩く周りが、晩秋にむかう時の佇まい・漂いだけが覆い被さってきた。