小椋佳の「シクラメンのかほり」が聞こえてくる-母が従妹のお嫁にシクラメン
「シクラメンのかほり」が気に入っていたのだろう。あるクリスマスに母はシクラメンの鉢を買い求め、プレゼントした。(後で、知ったことだが)
母は子供時代、同じ敷地に住む従妹(男)とよく口喧嘩をしていた。人から見れば、じゃれあっているように映っただろう。付き合いは長く続き、従妹が結婚し、母も結婚し、母は叔父を敬愛していたので、付き合いは続いていた。母は自分の父と母をとても敬愛していた。特に、母の親元への帰属意識が強かった。
時を経て、従妹が亡くなっても、母は従妹の妻とも相性が良いのか、付き合いを続けていた。よく家に連れて行っていた。自分も結婚し、妻も一緒に同行するようになった。母が亡くなってからも、叔母(叔母の子供とはまた従妹)と一緒によく食事に誘われ、誘いに応じて共に食事をした。
叔母に姪がおり、姪だけでしきりに叔母を訪ねており、その姪がタウン誌を片手に食べ歩きしていた。そこで出会った店によく連れて行ってたようだ。(※その姪には一度しかあったことがないが、正統派の美人で、優しかった)
母が亡くなってからも、よく叔母は「食事に行こう」と誘ってきた。ある日、食事を終えて叔母の家で談笑していた時、奥の部屋から「シクラメンの鉢」を携えてきた。
「これ、お母さんがクリスマスのプレゼントにくれたものよ」「もう5年は過ぎてるわ」
大事そうに思いやる様にシクラメンを撫でながら見せる。妻はのぞき込む。管理がよいのか、サマになっている。
「いいえ、水に気を付けているだけよ」「お母さまって、花が好きだったわ」
確かに母は洋画も好きだし、花も好きだった。※後年はプレゼント魔と言っていいくらい縁があればなにかプレゼントしていた。
叔母は時折、電話してきていた。母もよく電話していた。母が亡くなってからも、母に掛けるようにか、電話もしてきていた。今、叔母は実家を離れて娘のいる家で生活している。
2年半前、叔母から電話があった。「私、101才になりました」元気な声だ。「お母さんに挨拶いきたいんだけど・・・」遠地に引っ越した後、ままにならない環境で思うだけにとどまっている身が悔しいのだろう。
シクラメンの開花時期が終わる頃が叔母の誕生日だ。来年の誕生日頃、声が聴きたい。「私、104才になりました」と。
今夜は「シクラメンのかほり」を聞きたい気分だ。