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彼は女嫌い、本当? 月の雫の秘密
<翻案:定番の話のようなので>
彼は女嫌いを自任していた。
簡単にいえば、女が怖い。
上司に結婚するように迫られた。
苦し紛れに「フィアンセがいます」
「彼女を連れてくれば、信用しょう」
独り者と決め込んでいた幼馴染に頼み込んだ。
彼女はすっかりその気になった。
上司の前で「彼女」を見事演じきった。
上司も納得、勧められることはなくなった。
大学で「ホームカミングデー」があるという
「一緒に行って」彼女に誘われた。
「フィアンセのふりしてね」
注文が付いた。
お返しの「いいよ」だった。
同窓生から口々に「お似合いね」
堰が切れたのか、
彼女は映画館、美術館、博物館、・・・
留まることを知らない。
フィアンセのふりするには
キスが一番、と誘われた。
堰が切れたのか、
彼女は事あるごとに
キスに応じてくる。
彼女が恋しく、愛おしくなった。
月明かりの下で、本当にフィアンセに、と求めた。
彼女は返事の代わりにキスしてきた。
月の雫が彼女を輝かせた。
・本
・中村稔(2024年)『月の雫』青土社。
彼の女嫌いと、幼馴染の彼女との関係の変化が物語の核になりますね。彼女が演じることで始まった関係が、いつしかリアルな愛情へと発展する様子は、読者に感情移入を促す要素があります。特に月明かりの下でのキスは、物語のクライマックスとしてロマンティックで印象的です。