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陽だまりのレモン

<母娘の二人世帯>

夏の終わりの午後、
陽射しは鋭く、風も鈍く、
心の中の霧は晴れない
彷徨うばかりの心

<母が出て行った>

簡素な食卓のテーブルに
複数の紙幣
置手紙もなく、
空疎に思える部屋

ただ一つの青いレモン
・・・
寂しさの影を抱え、
心は陽だまりを探す

<数日後、祖母が来る>

看板の前で立ち止まり、
「レモンカラーの陽だまり」
祖母が微笑む
「おいでなさい」

涙の理由も知らずに、
ただその温もりに、
抱きしめられて泣いた。
「おかえり」をただ求めて。

祖母の優しさが、心を満たす。
祖父の笑顔が迎える。

放課後の穏やかな時間、
レモンの収穫に手を貸し、
冬の寒さも忘れた。
寂しさは溶けていった。

祖父が旅立ち、
祖母が旅立って、
1年、2年、3年、・・・
青いレモンは今も実り、
陽だまりの場所で、
青いレモンを一つずつ、一つずつ。