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四季の風佇

*画像:下記本659頁から。
*「風佇」(ふうちょ)では音がそぐわない。※このような字はない模様。
*もとは『枕草子』のイントロ。あの文体はなんだろう。順の文体にそぐって表現直し。元の文体の良さがことごとく消散。

春は曙のころでしょうか
山際はゆっくりと白んでゆきます
雲は紫がかり、細くたなびき
やがて、次第に明るくなっていきます

夏は夜でしょうか
月が出ると一層趣を増します
暗闇さえ、ホタルが多く、飛び違っていけば
二つ、三つと戯れ飛び
一つがスーッと飛び下がり
二つが分かれのように飛び去る

秋は夕暮れでしょうか
山の端に夕陽が射して
大変近く感じられます
三羽、四羽、烏が寝どころへ行く様
二羽、三羽と飛び急ぐ様は
あわれを誘います
まして
雁などが連なっていく様を遠くに見ますと
たいへんな趣が漂います

やがて、陽が見えなくなってしまうと
風の音が流れわたり
虫のなき声が涼やかに伝わり
たいへんあわれに感じます

冬は朝でしょうか
雪が降る時は言うまでもないでしょう
霜がたいへん白いのも
そうでなくても大変寒いので
火などを急いでおこして
炭火を持って部屋を巡り、廊下を渡ることも
すごく似合っております
寒さが次第に和らいでくると
火桶の火も白い灰に変わり
せつなさを覚えるものです

参考
・漢一 一 春は曙
・漢二 二一 すさまじきもの
<略>
・漢一一 御經
・漢一二 二六七 家廣く清げにて

・本
・池田正俊(昭和25年:1950年)『枕草子詳解』技報堂。※国会図書館デジタルコレクションにあり。