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アナゴにも危機が迫った、さらに迫ってくる
画像:「あなごめしのうえの」ホームページから。
アナゴの漁獲量が減っているという。温暖化と海の酸性化が懸念されている。マアナゴは日本近海でも獲れる。『漁業・養殖業生産統計年報』によると、1955年に12,000トンを越えていたが、2017年には4000トンを下回り、三分の一以下に下落している。
アナゴ漁獲量を日本の海区別にみると、瀬戸内海の漁獲量は群を抜いていた。1995年には6000トン近くあったものが、2017年に1000トン近くまで下落しており、他の海区とほぼ同じ水準になっている。瀬戸海区に次いでマアナゴの漁獲量が減少している海区は太平洋中区である。太平洋中区と瀬戸内海海区は黒潮の影響を受ける海区である。
他の海区(太平洋北区、東シナ海区、日本海西区)の影響度は、太平洋中区と瀬戸内海海区ほどではない。これらの海区は、海水温が相対的にも低く、マアナゴの幼生の来遊に与える影響が小さく、漁獲量の減少が相対的に小さいことによる。
海の温暖化と酸性化は不可逆的である。一旦、温暖化が進むと、元に戻ることはできないだろう。南極と北極の氷が溶ければ、深層海流大循環にも影響し、溶けた氷はもう元に戻ることはないだろう。大気や陸の温暖化とは比較できない性質を持っている。
海の温暖化が進めば、マアナゴの幼生が少なくなり、日本海区への来遊も少なくなり、漁獲量も減少する。
現在、「あなごめし」を提供している「うえの」には行列ができている。マアナゴの漁獲量が減少すれば、次第に行列は「ここまで」ということになり、やがて先着何名様となる。いよいよマアナゴの漁獲量が減少すれば、予約制となり、いずれは提供できなくなるだろう。
そのような事態は12年以内に起こるかもしれない。決して「明日」のことではない。グレート・リセットの思想が及ばない領域かもしれない。
参考文献
・山本智之(2020)『温暖化で日本の海に何が起こるのか 水面下で変わりゆく海の生態系』講談社(ブルーバックス B-2148)、pp. 129-138。