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こころがさまよう・銀杏並木の交差点

*引用を本文(文頭4行、文末4行、チズ「心がへこんでも」から)に取り込むため、引用先は文末に。

秋が好き
風に涼しさが一筋まじってきた
ほんのり黄色に染まった葉を
銀杏はまだちらり見せるだけ

亨は仕事に行き詰まり、若い時通った銀杏並木、学校が近くにある。帰郷して銀杏並木を歩いている。その並木はその町では名所になっている。

十字の交差点を中心に東西と南北に銀杏が黄色に色づくのを争うように優しい風が凪いでいる。よく千珠と別れた交差点だ。彼女は両親の希望で地元に残った。自分は風雲児にあこがれ、東京で就職した。

仕事は思い通りに行ってはいたが、最後の高みが見えてこない。(最後の一歩)そのエネルギーが欲しかった。気持ちを充電できれば、と。目的もなく彷徨うように故郷に帰ってきていた。足は何時しか通いなれた銀杏並木を歩いていた。

(そうか、彼女のマンションは、この向こうだったな)

うつむき加減で歩いていた。目先にスーツの女性姿が飛び込んできた。うつむいて歩く亨に女性の声がした。

(とおる・・・)

千珠は亨の姿を見ると、反射的に声をかけていた。言葉は潤んでいた。亨の消息が途切れていた。

千珠の専門は化学。AIが使えるもしれない。AIが多分野に利用され始めていた。先鞭を付けた専門家が企業内セミナーの講師だという。

明日、千珠の仕事終わりに会うことになった。夕刻、銀杏並木の交差点で待ち合わせた。銀杏並木の先には「料理作家」(「美食同源」がモットー)と言われる中国人が調理長を務めている。

二人はゆっくりと歩きださす。秋に入ってしばらくたっていた。空は清んでいる。幾葉かの落ち葉がやわらかい風に誘われていく。

心がへこんだら
空を見上げればいい
秋の空はどこまでも広がり
へこみはない

*引用先・チズ「心がへこんでも」から。

後日談:環境問題は深刻だね、さらに深刻になりそう。でも、展望はいくつかある。CO2を削減する代替燃料(藻などの研究)や新しいエネルギー源の開発も進んでいるね。それに、やわらかいソーラーパネル、どこかに僕が集中できる分野はないだろうか。

「私たちの子供が心へこまないようにね。」