ごくうが行く:帰省散歩
ごくうはいつものように散歩を心待ちにしている。もう冬至は過ぎているが、まだ暮れるのも早い。ごくうは散歩コースを一巡し、散歩の延長を狙っているのが、ありあり。
次のコースに向かおうとするとき、初めて見る若いカップルが小型犬を連れてやってくる。用心しているようだが、ごくうの感じを掴んだのか、リードを弛めた。ポメラニアン(色が濃いめ)と思われる小型犬がごくうの鼻先を嗅ぐ。
しかし、小型犬は男子の後ろに陣取り、様子を窺う。大丈夫と踏んだのか、女性が屈んでごくうを撫でに回る。
「成犬ですか」
妻が「もう9才です」
「柴犬?」
「ハーフです。パピヨンと柴犬のハーフです」
男性が「道理で」
男性も屈んでごくうを撫でる。小型犬は男性の側で様子を窺っている。
二言三言、言葉を交わし、分かれて行った。
歳末に帰省したのだろうか。お隣さんも犬を連れて帰省する。最近の青春漫画に出てくるようなカップルが犬を連れて散歩しているのを想像させる素敵なカップルだった。※新海誠監督のアニメの作り方はシステマティック、そのくらいは知っている。
少し歩いて、ごくうが立ち止まる。駐車場で洗車している。ごくうは勘違いしている。ここは「暗闇の美女」の家、主人が洗車していた。「暗闇の美女」はいなかった。ふと見ると、若い女性が家から出て来た。「暗闇の美女」には二人の子供がいる。子供が小さいとき、駐車場でよく遊んでいた。もう成人している。娘の方が帰省して来たのか、車から幼児を抱きかかえて家に入っていった。(そうか歳末帰省か)
やはり、ごくうは散歩の延長を狙っていた。交差点を渡らず、右に曲がり、いつもの散歩コースを逆に辿る。すぐ右手にいつもの車ではない車が駐車している。高校から帰る時、3、4度可愛がってくれた人の家だった。以前帰省したときちょうど散歩で出くわした。若い女性になっていた高校生が会釈して家に入っていった。(今日、帰省したんだな)
ごくうは目に入らなければ、そのまま散歩に一直線。今夕も散歩が長いな。ごくうは散歩を急いている。