見出し画像

習作童話:繭玉の約束-コジとサチ-

昔々、ずーっと昔、都にほど近い小さな村に、コジ(男の子)とサチ(女の子)がいました。

二人はとても仲良しで、いつも一緒に遊んだり、お互いの夢を語り合ったりして過ごしていました。村の外れには、美しい森が広がっていて、二人はよくそこに行き、花を摘んだり、小川で遊んだりしました。

ある日、コジの家に都の大店の番頭(村の出身)がやってきました。コジを見込んで。コジは都(みやこ)で丁稚奉公をすることになりました。

「都にはたくさんの人がいるんだって!」

コジは目を輝かせて話しました。でも、サチは少し寂しそうな顔をしました。

「コジ君、都で忙しくなるだろうけど、忘れないでね。私たちの絆が切れることがないように。」

サチは、手のひらに小さな繭玉を作り、それをコジに手渡しました。

「これが私たちの絆の証よ。どんなに遠くにいても、心は繋がっていると思ってね。」

「ありがとう。必ず帰ってくるからね!」

コジはその繭玉を大切に握りしめ、都へと出発しました。

都では、コジは忙しい毎日を送ることになりました。一所懸命、働き、たくさんのことを学び、少しずつ成長していきました。たくさんの新しい友達もできましたが、サチとの約束を心の中でいつも忘れませんでした。

夜、静かな部屋でふと繭玉を思い出すと、サチと過ごしたあの温かい日々が蘇りました。

何年かが過ぎ、コジも大きくなり、都で立派に仕事をこなせるようになっていました。ふと故郷の村を思い出し、藪入りの日、「サチに会いに帰ろう!」と思い立ちました。

故郷に戻ったコジが村の入り口に差し掛かると、そこには変わらずにサチが待っていました。サチもまた、コジが帰ってくる日をずっと待ち続けていたのです。

二人はしばらく言葉も出ませんでした。目を合わせると、お互いの心が一つになったような気がしました。サチは、コジが都でどんなに頑張っていたかを感じ取っていました。コジも、サチがいつも自分を信じて待っていてくれたことを感じ、心が温かくなりました。

「これから、一緒に歩んでいこうね。」

コジが言います。サチも微笑んでそれに応えます。

「心のままに」

二人は、手を取り合って並び、再び未来へと歩き始めました。

二人の絆はいつまでも変わることなく、深く、強く結ばれていたのでした。

サチから受け取った繭玉は、今でも二人の傍で飾られています。

おしまい。