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読書ノート『帝国型生活様式:グローバルな資本主義における人間と自然への搾取について』について

画像:原書と訳書の表紙を並べたものであり、いずれもAmazonからの引用。

・原著:Ulrich Brand, Markus Wissen, Lebensweise: Zur Ausbeutung von Mensch und Natur in Zeiten des globalen Oekom, Verlag GmbH, 2017.
・訳書:ウルリッヒ・ブラント、マークス・ヴィッセン著、中村健吾 、斎藤幸平訳(2021)『地球を壊す暮らし方:帝国型生活様式と新たな搾取』岩波書店。
※https://note.com/megumilang/n/n9937dee5a781?scrollpos=comment
では、原著の広告用ではなく、実際の書物写真が示されている。

*本読みは原書ではなく、翻訳書に寄っている。

<紹介でもありません。書評でもありません。この書を契機に「地球の暮らし方」の問題について考えてみました。楽観的に考えることもできませんが、悲観的に考えたものでもありません。経済活動を外して考えることはできませんが、「帝国型」の視点から考えると、旧態依然となってしまう危険性があるのではないか。また、そのような視座からテイクオフして考えても、「連帯型」が人間と自然の関係を根本的に改善することを期待できるものでもなさそうです。繰り返して言えば、この書を通して、世界の経済・環境事情を考えてみることにしますが、「地球を壊す暮らし方」は帝国型から連帯型にシフトした位では解決できない問題と思われます。>

翻訳書の表紙扉に。

今現実に採用されている「生産生活様式」が、端的に翻訳書の表紙扉で示されている。

帝国型生産生活様式とは、豊かさと自由、そのための競争を求める私たちの「普通の暮らし」に他ならない。それは私たちの社会におけるジェンダー・階級・人種にわたる差別を温存させるとともに、グローバル・サウスにおける過酷な労働を生み、資源を収奪し、文化や生態系を破壊し、結果として地球全体の環境を破壊している。だが、そうした矛盾や犠牲を目につかないように隠蔽することも、この生活様式の大きな特徴である。

帝国型生産生活様式とは、
豊かさと自由、そのための競争を求める私たちの「普通の暮らし」に他ならない。

それは私たちの社会におけるジェンダー・階級・人種にわたる差別を温存させるとともに、
グローバル・サウスにおける過酷な労働を生み、資源を収奪し、文化や生態系を破壊し、
結果として地球全体の環境を破壊している。

だが、そうした矛盾や犠牲を目につかないように隠蔽することも、
この生活様式の大きな特徴である。


はじめに

この7月中旬、ドイツの西部ラインラントプファルツ州のアールワイラー郡も大洪水で甚大な被害を受けた。ドイツのメルケル首相は、「ドイツ語ではこの惨事を表す言葉がほとんどない」と、大洪水の悲惨さを如実に表現している。

大洪水と気候変動との関係については、もはや無視できない状況を大幅に超えている。ドイツでは、6月に改正気候保護法が成立、気候保護のための新プログラムが発動されている。その上で、メルケル首相は、インタビューに応えて、「強化した気候保護法を全て実行に移し、気候変動との闘いを加速させなければならない」としている。

気候変動が差し迫った問題であるという認識する人は多く、気候変動への戦いも加速させなければならない。しかし、そのような気候変動への戦いの側で、気候変動を加速させる要因が多く、広範であるために、焼け石に水の状態のような気がする。おそらく気候変動への戦いは、一進一退どころか、一進三退以上の開きがあり、ブレーキを踏んでも走り続ける車のような状況だろう。せめてカタストロフィが起る途を避けるように努めざるを得ない。

帝国型生活様式であろうと、連帯型生活様式であろうと、念頭にあるのは現代の支配的な生活様式である。言い換えれば、理念の違いによる生活様式を表現したに過ぎない。ここでは、「現代型生活様式」として、まず現代型生活様式に至る過程を見てみることにする。

参考:本書の目次

日本語版への序文――コロナの時代に本書への批評に応える
第1章 或る生活様式の境界地点にて
第2章 多角的な危機と社会的・生態学的な転換
第3章 帝国型生活様式の概念
第4章 帝国型生活様式の形成史
第5章 帝国型生活様式のグローバルな普遍化と深化
第6章 帝国型の自動車移動
第7章 偽りのオルタナティブ-緑の経済から緑の資本主義へ?
第8章 連帯型生活様式の輪郭

岩波書店による「本の内容説明」

労働と資源を奪い、ゴミを押しつける先進国のライフスタイル。ドイツでベストセラーとなった話題の書。https://www.iwanami.co.jp/book/b583365.html

経済学史学会による「本の内容説明」

グローバル・サウスから労働と資源を奪いつつ、排出物と廃棄物を押しつけることで成り立つ私たちの暮らし=〈帝国型生活様式〉。罪の意識を感じることなく地球環境を破壊するライフスタイルは、どのように広がり維持されてきたのか。グローバルな支配と搾取の構造を描き出し、ドイツで異例のベストセラーとなった話題の書。
https://jshet.net/news/books/%e4%b8%ad%e6%9d%91%e5%81%a5%e5%90%be%e3%83%bb%e6%96%8e%e8%97%a4%e5%b9%b8%e5%b9%b3-%e7%9b%a3%e8%a8%b3-%e3%80%8e%e5%9c%b0%e7%90%83%e3%82%92%e5%a3%8a%e3%81%99%e6%9a%ae%e3%82%89%e3%81%97%e6%96%b9%e3%80%9c/

---現代型生活様式について-その1(未完)