見出し画像

演劇志望女子が相談にやってきた

<見出し画像と本文は独立です。>

何の専門家でもない。ましてや、演劇は文化としての「憧れ」はあっても、「シモキタ」がサブカルチャの発信地としてまだ十分認知されるような時代でもなかった。

1970年代中頃、東京女子がシモキタに連れて行ってくれた。東京女子とシモキタを散策しながら、すでに上演している劇場(華美なものではない)を見学した後(ライブハウスはなかったような気がする)、一般家庭を改装した「喫茶店」に連れて行ってくれた。

(シモキタかぁ)

友は3畳半か4畳半のアパートがねぐらだった。世の中のトレンド(当時はこのような用語はなかった)に敏感な若者も多かったが、映画の一コマのように押し寄せる波を横目に勉学に励んでいた。

しかし、演劇に関心にある人たちの間では、時代の押し寄せてくる波とともに、演劇も次第に潮流となって押し寄せて来るような予感がしていた。そんな時代に、脳裏にシモキタが刻まれていった。

シモキタの話しをどこで聞きつけたのか、二十歳前の女性が同郷のよしみで、友達を伴ってやってきた。紹介を受けると、若い女性はいきなり、力強い目で、訴える。

「演劇をやりたいんです」

友達同士で話しているのか、若い女性二人は顔を見合わせながら、一方的に話す。勢いに戸惑いながら聞いていると、

「親が、東京に行くなら20才になってからだ、と制止している」

「説き伏せてくれ」と言っているのではなさそうだ。思いの丈を話し終わると、二人は踵を返した。短大を卒業し、20才を迎えた年には上京するつもりのようだ。去りゆく彼女の後ろ姿に決意が滲んでいた。

<以下の記事とは独立です。>