読書メモ:『ツツジの文化誌』・6000万年前にツツジの祖先は誕生している
*一部は、本にはなく、追加したものである。
ツツジの祖先は、化石からみると、6000万年前には出現していたと思われる。その頃に誕生したツツジの祖先は、後に「ツツジ科」共通の祖先となったと思われる。
この当時には、ツツジ属もすでに進化している可能性が高い。また、大陸が移動中であり、インド大陸とユーラシア大陸が衝突していず、ヒマラヤ山脈が形成される前であった。ツツジ属も、後の中央ヨーロッパ、中国、北米大陸北部にくまなく分布していたようだ。
DNA分析によって、ツツジ属の種は「Rhododendron camtschaticum」(ロードデンドロン・カムシャティカム)が祖先でありそうだ。亜北極の寒冷地に根付いていたと思われる。
ロードデンドロン・カムシャティカムは、日本でいえば、「エゾツツジ」に似ている。そのロードデンドロン・カムシャティカムは、寒くて岩に近い土壌に覆い尽くすように根を張っていた模様である。特徴ある形質の一つとして、群れるように集まり生えている。樹高はたかだか20センチから30センチ程度である。個々のカムシャティカムは、花や茎や葉に「多数の腺毛」を持ち、季節には、小さな濃い赤紫の花を咲かせる。
画像:Osmo Jussila, Rhododendron camtschaticum, Therorhodion, 2017, Volume IV, page 577.
ツツジの共通の形質の一面は、左右対称の花型であり、春には芽を出し、葉を茂らせる。開花すれば、雄蘂から糸状の粘る糸(粘着糸)が出てくる。結実すれば、小さなタネが莢に詰まる。やがて、莢は裂開し、タネが飛び散る。
DNAの解析結果、約4000万年前、ツツジ属は3つの系統に分岐したと考えられている。
①ヒカゲツツジ亜属(有鱗片型)
②シャクナゲ亜属(無鱗片型):レンゲツツジ亜属を含む。
③ツツジ亜属
これらの3系統はアジアが自生地であり、アジアに固有であるので、分岐もアジアで起こったものと考えられる。
---続
参考文献
*Osmo Jussila, Rhododendron camtschaticum, Therorhodion, 2017, Volume IV, page 577.
引用箇所
*チャード・ミルン著/竹田円訳(2022年)『ツツジの文化誌』(花と木の図書館)、原書房、136-137。
本
*チャード・ミルン著/竹田円訳(2022年)『ツツジの文化誌』(花と木の図書館)、原書房。
目次
序章 毒と毒
第1章 ツツジの性
第2章 アザレアの興亡
第3章 ツツジ狂騒
第4章 温室の感動
第5章 ツツジのふるさと
第6章 ツツジの薬効と毒
第7章 ホトトギスの涙
第8章 一族の鼻つまみ者
第9章 ツツジの保護、収集、未来